DVDで映画『太陽の季節』(1956年、監督・脚本:古川卓巳)を鑑賞。先日他界した石原慎太郎が芥川賞を受賞し、センセーショナルな話題となった短編小説が原作。主演は長門裕之。日活映画。白黒映画。
高校生の津川竜哉(長門裕之)は、拳闘に情熱をぶつけるタフな若者だった。ある日、友人たちと銀座に繰り出すが、軍資金が乏しく素人娘をナンパした遊ぶことにする。武田英子(南田洋子)ら三人に目をつけて、竜哉は英子と親密な関係となるが……。
公開当時はセンセーショナルな作品として話題になったのだろうが、いま観ると何ということもない話。いまの日本の風俗のほうが、この映画の描写よりずっと先に行ってしまった。時は流れた。
最後までブルジョア出身のお坊ちゃんの青春映画である。これが鼻につくだけでなく映画としても面白みに欠ける。ただし、後にオシドリ夫婦として知られる長門裕之と南田洋子の共演作ということと、後に日活を背負う大スターになる石原裕次郎の初出演作という2点において歴史に残るだろう。
文学でギリギリ成立していた作品なのだろうが、映画化したとたんに破綻している失敗例。人物描写や心理描写などすべてが浅い。