新文芸坐の《追悼・萩原健一 銀幕の反逆児に、別れの“ララバイ”を》で、映画『化石の森』(1985年、監督:篠田正浩)を鑑賞。原作は石原慎太郎の同名小説。
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母親(杉村春子)の不貞を目撃して以来、性格がすっかり歪んでしまった治夫(萩原健一)は大学病院のインターンとして鬱々とした日々を過ごしていた。ある日、偶然同級生の英子(二宮さよ子)と再会し関係を持ち、彼女と共謀して殺人を犯す。粘着質の英子と治夫にべったりの母親に囚われて、次第に治夫は身動きがとれなくなっていく……。
救いようのない暗いストーリーだが、主人公の内面を描くことに執着せず、サスペンス調に演出されているので飽きずに見れる。ショーケンはは本作のほかにも堕ちていくエリートを演じている。本作でも医師には見えず知的に見えないがしっくりくるのは不思議である。また二宮さよ子の脱ぎっぷりとエロさもいい。男を破滅させるファム・ファタールというところか。
この映画はショーケンが主演であるが、美味しいところは母親役の杉村春子が持っていく。母親の過去は映像化されていないにもかかわらず、演技でそれを観客にわからせてしまうところがすごい。彼女の映画といってもいいだろう。
この映画は何度か見たが、母親が喉のケアに使用しているスチーム吸入器が登場した時点で映画の全貌を思い出してしまう。映画に登場するのはもっと古いタイプだが、こんなタイプの機器である。どうということもない小道具のひとつだがなぜか印象に残っている。
余談だが、映画には監督婦人の岩下志麻がショーケンの姉役で登場して、母親と3人の子どもたちで待ち合わせをするシーンがある。屋外でお茶を飲めるオープンなスペースで、ボーイが何人も控えていて高級感がある。これはいったいどこだろう。いまもあるのだろうか。ロケ地が気になる。