退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

よしながふみのコミック「大奥」を読了する

よしながふみによる、少女漫画「大奥」(全19巻)を読み終えた。隔月刊誌「MELODY」での連載期間は2004年から2021年に及ぶ。

ジャンル分けするのが難しい作品である。時代劇でもあり、歴史改編SF、またジェンダー作品とも言えるかもしれない。2010年に実写映画化され、2012年にテレビドラマと続編映画が製作された。

日本の江戸時代をモデルとした世界観。謎の疫病で男子の人口が急速に減少した社会において、統治機構の構成員が男性から女性に移っていく。この状況を背景に江戸城の大奥を中心に数々の歴史的出来事を描く。

歴史上では男性である人物が女性に、女性である人物が男性に置き換えられているため、人物相関が実にややこしい。それぞれの単行本の巻頭には見開きの人物相関図がついていたが、これではまったく足りずに「うーん」と頭を悩ますことが多かった。人物事典のようなモノがあれば、それを手元に置いてもう一度読み直したい。

最終巻では、もちろん大奥の終焉が描かれる。江戸城開城をめぐって勝海舟西郷隆盛が会談するくだりは秀逸。徳川慶喜には死んでもらわなければならないと考える西郷が決意を翻すあたりは読み応えがあった。

また新政府軍が大奥に入り、書物や衣服などをすべて焼き払う描写があったが、まったく惜しいことだ。これが残っていて江戸東京博物館あたりに収蔵されていたらと思わずにはいられない。

とにかく全編を通して、大胆な発想と緻密な物語構成には舌を巻く。すでに高い評価を得ている作品でとくに言うこともないが、あえて言えば、吉宗の時代から始めた着想が素晴らしかたっと言っておきたい。

私の読書メモを見ると、この作品を読み始めたのは2016年の冬だった。連載も長かったが、読む側も長かったなぁ、としみじみとした気持ちである。映画ファンとしては終盤の幕末編もいずれ映像化されないかなと期待したい。

余談だが、ラストに津田梅子らしき人物が登場する。作者は津田塾の出身かしらと思ったが、そうではなく慶応OGだった。ちゃんちゃん。

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