退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『柔道一代』(1963) / 千葉真一が格闘映画に初主演を遂げた記念作

YouTubeの「TOEI Xstream theater」チャンネルで無料配信されていた、映画『柔道一代』(1963年、監督:佐伯清)を鑑賞。70年代に多くの格闘映画で活躍した千葉真一にとって、本作は格闘映画の初主演作。若き日の千葉真一を堪能できるレアな映画。初見。白黒映画。

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柔道修行のために上京した本郷四郎(千葉真一)は、汽車でスリにあい、車掌から無賃乗車の疑いをかけられ難渋する。水商売風の女・ミネ(筑波久子)に助けられた四郎は、ミネの勧めで天道流大坪道場に入門し、中山(山本麟一)から荒稽古の洗礼を受ける。傷ついた門下生たちを手当する、大坪の一人娘・道子(佐久間良子)に四郎は惹かれていく……。

この映画の主人公・四郎のモデルは、講道館四天王のひとり・西郷四郎であり、四郎が目標とする柔道の祖・嘉納治五郎をモデルとした香野理五郎役には私の好きな杉浦直樹が配されている。尺の制約もあるのだろうが、人物描写がされているのはこの二人だけで、すこし寂しい気もする。

千葉のアクションを堪能できる映画だが、いちばんの見所は猫を手本に受け身を研究しているシーン。リアル版「にゃんぱらり」である。高いところから見事な着地を決める千葉ちゃん。さすが元・体操選手の高い身体能力を遺憾なく発揮している。

この動画のサムネは、柔道着姿で構えている村田英雄がいちばん目立っていた。クレジットタイトルのトップも村田で「え、千葉ちゃんじゃないの?」と面食らうが、ストーリーのなかでは千葉が主演である。すでに大御所だった村田と、売出し中の千葉との格の違いなのだろう。村田は映画のなかでも破格の扱いで貫禄を示していてる。ちなみに村田はヒット曲「柔道一代」を歌っていて本編で使われている。


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しかしその後、千葉がスターダムにのし上がっていくのは周知のとおり。ブレイク前の若き日の千葉の姿をネット配信で見れるのは僥倖。

結局、ラストの大立ち回りで好敵手に思われた琉球空手の使い手との対決は決着がつかずに、次回作への含みを残す。シリーズ次回作として『柔道一代 講道館の鬼 』(1964年)が撮られているが、こちらは未見。いずれこのチャンネルで配信してほしい。