一昨年から少しずつ読み進めていたコミック『美味しんぼ』だが、ついに主人公・山岡士郎と父・雄山が和解するところまでたどり着いた(第102巻)。冒頭から雄山と山岡の父子の確執を物語の中心に据えていたコミックの大きな区切りである。
いつもより厚いこの巻は、まるまる父子の和解に割かれている。「究極のメニュー」と「至高のメニュー」の対決で、「どれだけ相手を喜ばせせることができるか」をテーマに争うことになる。お互いに対立していた相手のための料理を考えるのだから和解するに都合よすぎる展開だ。
これはすべて山岡の妻である(旧姓・栗田)ゆう子の策略(?)によるもの。なんという策士。すべてをゆう子が支配して周囲の人間を操って和解に持ち込んでいる。恐ろしい子……。
大団円とも言える和解のエピソードはよく練られていて感動的ではあるが、どこかしっくりこない。あれほど尖ってアグレッシブだった山岡がすっかり丸くなってしまっている。まあ結婚して、子どもが3人もできれば人間は誰しも穏やかになるのかもしれないが、見方によっては腑抜けになったようにも見える。
和解後、連載はしばらく休んだのちに再開している。その後の大炎上を思い起こすと、このタイミングで連載を終わっていればよかったかもしれない。「日本全県味巡り」の企画は完成させてほしかったが……。
巻末に「さて、これからだね」というタイトルで、原作×作画×山岡夫妻×飛沢を交えた架空座談会が載っている。短い座談会だが筆が冴えていて面白い。
既刊分を読了するのもあと一息となった。