退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

新文芸坐で大映版『忠臣蔵』(1958年)を観る

《12月14日は四十七士討ち入りの日!》ということで、新文芸坐大映版『忠臣蔵』(1958年、監督:渡辺邦男)を鑑賞。1本立て。

大映創立18年を記念して製作された、長谷川一夫市川雷蔵勝新太郎京マチ子山本富士子若尾文子中村玉緒ら当時の大映所属の俳優が総出演したオールスターキャスト作品。もちろんカラー、大映スコープ。

戦後に限ってもかなりの数の映像化作品がある「忠臣蔵」だが、大映ファンの私にとっては大好物の作品。一度映画館で見たいと思っていたが、ようやく実現した。


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本作は早撮りで知られた渡辺邦男監督が初めて大映で撮った作品である。作風はあまり大映らしくない気がするが、多忙なスターたちを上手く回して短期間で撮影を終えるために招聘されたのだろう。

いま映画を観ても、早撮りで製作されたにもかかわらず、まったく手抜きしたところが感じられず、絢爛豪華であり、大映オールスターキャストの作品に相応しい風格のある仕上がりになっている。往時の日本映画の隆盛を感じることができる。

難点を言えば、大工の棟梁の娘に扮した若尾文子があまりきれいに撮られていない点か。京マチ子山本富士子はちゃんと撮影されているのに残念なことだ。

映画の内容はオーソドックスな「忠臣蔵」であり、有名なエピソードをきっちり抑えていて安心して観ることができる。上映時間166分で休憩なしの上映だったが長く感じない。

ただし、せっかく大スクリーンで見れたのにフィルムが劣化しているのが残念だった。とくに「コマ飛び」がひどい。例えば、松の廊下で浅野内匠頭が吉良に斬りかかる瞬間で「コマ飛び」して、眉間に一撃入れるシーンが見れなかった。もうニュープリントはつくれないだろうから、はやくデジタル化してDCPにしてほしいものだ。

上映後は春日太一さんの短いトークショーがあり面白い話を聞けた。イマドキの若者は「忠臣蔵」を知らないというのにはびっくり。「忠臣蔵」と言えば、日本人なら必ず知っている話だと思ったが、最近はそういう常識は通用しないようだ。

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トークショーでは、「忠臣蔵」の上映を毎年恒例にしたいと言っていたが、なかなかいいアイディアかもしれない。次は東映映画から1本選んでほしい。

トークショーの後、ロビーでは新刊のサイン会が行われていたが、それを横目に帰路に着いた。ひさしぶりの名画座を堪能した。

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