退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『喜劇急行列車』(1967) / 渥美清主演の人情喜劇「列車シリーズ」第1作

YouTubeの「TOEI Xstream theater」チャンネルで配信されていた、映画『喜劇急行列車』(1966年、監督:瀬川昌治)を鑑賞。主演は渥美清渥美清が演じる車掌が、特急列車の乗客たちが起こす騒動に対処する姿を描く喜劇映画。

特急列車の専務車掌の青木吾一(渥美清)は、この道20年のベテラン。その青木が乗車する今日の列車は、佐世保長崎行の特急さくら号。東京を出発して改札に廻る青木は、乗客の中に、かつて秘かに想いを寄せていた塚田毬子(佐久間良子)の姿を見つけ、すっかり動転してしまうが……。


www.youtube.com

東映喜劇路線」を目論んで、岡田茂東宝から渥美清を主役として引き抜き、喜劇映画の名手・瀬川昌治を監督に起用したシリーズ第1作。鉄道省出身の大川社長の顔のおかげか、国鉄の協力のもとまるで国鉄のPR映画のようにもなっている。それでも当時の国鉄の様子が記録されているのは貴重。

渥美清が主演していることもあり、どうしても「寅さん」を彷彿とさせてしまう。佐久間良子にあっさり振られてしまうのも寅さんのようだ。

寅さんとちがうのは、本作では主人公がちゃんと家庭を持ち、妻・きぬ子(楠トシエ)がストーリーに絡んでくるところ。後半、吾一の浮気を疑ったきぬ子が、新幹線を使って吾一が勤務している特急列車を追いかけるあたりから、がぜん面白くなってくる。

心臓病の少年を励ましたり、車内で無事に出産するなどいい話ばかりで毒がないが、さすが瀬川昌治の手による人情喜劇でありよくできている。

東映喜劇もなかなかいいなと見ていたが、この「列車シリーズ」はわずか3作で打ち切りとなる。その後、渥美清は松竹に移り、「男はつらいよ」シリーズで「寅さん」を演じて国民的人気を博したのは周知のとおり。

やはり東映にはまっとうな「喜劇」は無理だったのか……。