DVDで映画『キネマの天地』(1986年、監督:山田洋次)を鑑賞。松竹大船撮影所50周年記念作品。1936年に松竹は蒲田撮影所を大船に移転するが、その直前の松竹蒲田撮影所が舞台である。主演は有森也実、中井貴一。
田中絹代をモデルにした小春(有森也実)が、浅草の映画館で売り子から抜擢された映画スターへの階段を上がる姿を若手助監督(中井貴一)との恋模様を交えながら描く人情映画。
主演の有森也実は可憐で初々しいが、これから大物スターになるようなオーラが感じられないことが難点か。
小津安二郎や斎藤寅次郎など往時の映画監督や俳優たちをモデルとしたキャラクターにより戦前の日本映画の黄金期が描かれる。岸部一徳が演じる小津が演技指導するシーンはちょっと面白い。ほかにも古い日本映画のファンは楽しめるのではないか。
蒲田撮影所といえば、つかこうへいの原作・脚本による『蒲田行進曲』(1982年、監督:深作欣二)が想起されて、「蒲田行進曲」の楽曲もよく知られている。東映出身の深作欣二が、松竹の聖地とも言える蒲田撮影所の映画を撮ったことに対する松竹関係者の思いが伝わってくるようだ。
監督には、松竹の看板とも言える山田洋次が起用されていて、この映画によりシリーズが休止されたせいか、渥美清、倍賞千恵子をはじめ「男はつらいよ」シリーズの常連俳優が出演しているのも見どころ。
本作で蒲田から移転した大船撮影所もいまはもうない。娯楽の栄枯盛衰を思い知らされる。