退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『ドグラ・マグラ』(1988) / 無謀な映画化というわりには意外にフツーの映画だった

DVDで映画『ドグラ・マグラ』(1988年、監督:松本俊夫)を鑑賞する。原作は夢野久作の代表作とされる怪奇小説。日本探偵小説三大奇書に数えられているという。常軌を逸した作風で知られており、映画化は無謀とされていた。

この映画を見直そうと思ったのは、コロナ禍が深刻化する前に早稲田松竹松本俊夫監督の特集があり、『薔薇の葬列』と『修羅』の二本立てを見たのがきっかけ。寡作として知られる監督の最後の劇映画であり、どうせなら映画館で見たかったなと思っていたからである。

大正末期。九州の大学病院の精神科で呉一郎(松田洋治)は目を覚ます。一郎は自分の名前も顔も覚えていない記憶喪失の状態であった。そこへ現れた大学教授の若林(室田日出男)、謎の死を遂げた正木教授(桂枝雀 )の導きにより記憶を取り戻そうとするが……。


2020.2.4 『ドグラ・マグラ』Blu-ray発売 映画史に残る映像迷宮の大傑作がハイクオリティー映像で甦る!!

映画という表現に限界があるにもかかわらず、難解な原作を2時間の映画にまとめたのはお手柄。しかも精神世界を描くにあたり、特殊撮影やCGなどの映像技術でお茶を濁すことなくフツーの映画としてきちんと撮られているのは、監督の知性の現れだろうか。美術(木村威夫)や撮影(鈴木達夫)らスタッフの力も大きい。

この映画を見るあたり、だれでも疑問に思うことがあるだろう。

  1. なぜ「ドグラ・マグラ」を映画化しようと思ったのか?
  2. 桂枝雀のキャスティングの経緯は?

上の疑問にはDVDの特典映像として収録されている、監督へのインタビュー映像で語られている。もっと椅子の深く腰掛ければいいのにと思ったが、この映像は貴重であろう。

出演者のなかでは桂枝雀の演技は必見。落語のときのようにハイテンションではなく、丁寧に演じている。いたってフツーである。本作は桂枝雀の唯一の映画出演作だが、やり方次第では役者としても成功したのではないかと思わせる。

加えて、本編に監督の解説がオーディオコメンタリーとして収録されているのも素晴らしい。東宝特撮のDVDの場合はスタッフや出演者の思い出話に終始している場合が多いが、この映画では監督はひとりでガチで作品解説している。さながら大学の講義を受けているようだが、難解な映画だけにとても有用である。

万人向けの映画とは言えないが、映画ファンに強くオススメしたい。