退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『オーロラの下で』(1990) / アラスカからシベリアに舞台を変更してつくられた日ソ合作の感動超大作

DVDで映画『オーロラの下で』(1990年、監督:後藤俊夫)を鑑賞。原作は戸川幸夫の実話に基づく児童文学。原作の舞台はアラスカだったが映画ではこれをシベリアに翻案して、シベリア出兵やロシア革命などを絡めながら描く日ソ合作の感動超大作。主演は役所広司

主人王・田宮源蔵はマタギだった。女郎として売られた恋人(桜田淳子)を取り戻すため、田宮は単身シベリアに渡り、密猟をして金を稼いでいた。紆余曲折ののち、オオカミと犬の混血である「ブラン(吹雪の意)」と出会い、犬ぞり隊を編成して子供たちを救うべく医療物資を届ける旅に出かけるが……。


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シベリアオオカミを主人公にした映画を企画した東映だったが監督選びは難航し、動物映画で実績のあった後藤俊夫監督に白羽の矢が立った。シベリアロケを刊行して撮影されたオオカミをはじめるとする動物のカットは素晴らしい。

しかし映画としてはイマイチ。子ども向けだったせいもあるが、主人公と桜田淳子の関係や、主人公とロシア女との関係が希薄で面白くない。ここはロシア女性とのロマンスを強調して、金髪女との熱烈な濡れ場シーンぐらいは必要だったろう。とにかく動物や風景の撮影に力が入っているわりには、人間ドラマが描けていないのは不満。

そもそも子どもたちを救うための、医療物資を運ぶという重要任務を外国人が単身で担わかねればいけなかったのかちゃんと說明してほしいところだ。

実際にオオカミを捕獲して調教したり、長期にわたるリベリア・ロケを敢行したりカネがかかっているのはわかるが、それに見合う感動は得られなかった。感動大作をねらいすぎたのだろうか。それでも公開当時は人気を博した記憶があるが、プロモーションが成功したのだろう。作品としては凡庸だが、大スクリーンで見ると評価が変わるかもしれない。

さてDVDに収録されていたプロモーション映像にロック歌手として活躍した川村かおり(のちに川村カオリ)が出演していたのを見つけた。日本人の父親とロシア人の母親とのハーフとしてモスクワで生まれたことで、この日ソ合作映画のプロモーションに参加していたのだろうか。とても懐かしく思えた。