退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『海へ -See You-』(1988) / 健さんがパリダカでトラックを運転するよ

新文芸坐高倉健さん追悼企画《さらば健さん! 銀幕に刻んだ男の生き様 追悼 高倉健 第三部》で、『海へ -See You-』(1988年、監督:蔵原惟繕)を鑑賞。上映時間が3時間近い大作のためか一本立てだった。

パリ・ダカールラリーを舞台に、登場人物の人生が交差するという作品。健さんはサポートトラックを運転して三菱自動車のラリーチームを支える。パジェロが大活躍するなど、全編通してタイアップが前面に押し出されていて少ししつこい。

この映画の白眉は、現地ロケによるラリーの映像、そして壮大な砂漠の風景だろう。大スクリーンでその迫力を体験できたのは貴重。幸運なことにフィルムの状態は良好でキレイな映像だった。

健さんは相変わらず二枚目なのだが、この映画でいいなと思ったのはラリーチームのリーダーを演じた小林稔侍。ひげ面がなかなかいい。稔侍のくせにカッコいいぞ。

しかし映画としては冗長な印象は拭えない。倉本聰による脚本も退屈。とくにヒロインの桜田淳子いしだあゆみの扱いがひどい。桜田は人気歌手の役で、紅白歌合戦をすっぽかしてパリダカに出場する彼氏を追って日本を脱出してラリーに潜り込むとか……。

そして、いしだは二番目の夫・高倉と別れ、いまはスペインの闘牛士の現在の夫ともにパリダカに参加。なぜか最初の夫のイタリア人と高倉は親友という。しかも高倉といしだの離婚の経緯は描かれない。長尺なのにずいぶん雑な台本だ。

さらに二人のヒロインは、過酷な砂漠のなかでもメイクばっちり。それはいいとしても、桜田は悪路のなかトラックの荷台で過ごしたり、いしだは走行中にシートベルトを勝手に外したりして自由すぎる。

この映画は、人間ドラマはひとまず措いておいて、ラリーの様子と砂漠の風景を楽しむがよいだろう。レアな作品を鑑賞できたのでよかったことにしておこう。

入場時、今回のフィルムに字幕が付いていないからと、外国語のシーンを簡単に解説した紙をもらった。上映可能なフィルムは一本しかないとアナウンスしていたが、ソフト化のためにプリントしたフィルムだったのだろうか。いままでにない体験だった。
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さて「海へ」というタイトルは、ラリーの目的地ダカールが大西洋に面した港町からだろう。ちなみに地域の治安悪化にともないパリ・ダカールラリーは、ダカール・ラリーと名称を変えて現在では南米で実施されているらしい。時代は流れる。