退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『博徒一家』(1970) / オールスター・キャストによる東映・仁侠映画の集大成

新文芸坐高倉健追悼企画《さらば健さん! 銀幕に刻んだ男の生き様 追悼 高倉健 第二部・東映編》で、『博徒一家』(1970年、監督:小沢茂弘)を鑑賞。プログラムピクチャーの名手によるオールスター・キャストによる任侠映画

名門博徒の荒政一家には三羽烏高倉健若山富三郎大木実)と呼ばれる子分たちがいた。親分(志村喬)の引退に伴う跡目争いにつけこみ、工事の利権を独占しようとする田沼一家の非道に高倉が憤り、客演の鶴田浩二と共に殴りこみをかける。高倉を慕うヒロインに藤純子を迎えるという超オールスター・キャスト。

豪華キャストを手堅くさばく手腕は大したものだが、映画は凡庸な仕上がりになっている。まあ任侠映画はどんなものか知りたい人は、本作にその様式美が集約されているので一度見てみるとよいだろう。

ステレオタイプの悪玉が極悪非道の限りを尽くし、主人公の堪忍袋の緒が切れて、最後には殴りこむという任侠映画にありがちなストーリーは、当時でもマンネリだったのではないか。観客は満足していたのだろうか気になるところ。

このマンネリ感を払拭するには、菅原文太主演の『仁義なき戦い』(1973年)の登場を待たなければならない。今回の高倉健の追悼企画に続いて、新文芸坐では今月中旬から菅原文太の追悼企画も予定されている。2つの追悼企画を東映映画の歴史に重ねてみると感慨深い。