退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『東京原発』(2004) / 東京に原発を誘致しようとする計画の行方を描くブラックコメディ

Amazonプライム・ビデオで映画『東京原発』(2004年、監督・脚本:山川元)を鑑賞。反原発プロパガンダ映画。主演は役所広司

ある朝、東京都の幹部(段田安則平田満田山涼成・菅原大吉・岸部一徳吉田日出子)たちに、都知事・天馬(役所広司)から緊急会議を招集するというメールが届く。会議室に集まった幹部たちを前に、都知事から「東京に原発を誘致する!」という驚くべきプランが飛び出し、都庁はパニックに陥る。一方、フランスから極秘にうちに輸送されてきた大量のプルトニウム燃料を積んだトラックが爆弾マニアの若者にジャックされて……。


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この映画は、福島第一原発事故の前に撮られていたことに留意したい。この時期、国策であった原発推進に異議を唱える商業映画を制作・興行することはタブーだったろうと想像するが、豪華なキャストで驚かされる。錚々たる俳優陣が本当に出演してよかったのだろうか……。

東京に原発を誘致するというアイデアは、広瀬隆『東京に原発を!』にインスパイアされたと想像するが、案の定、全編通して反原発のトーンで固めれている。特筆すべきは会議中に東大教授(綾田俊樹)が原子力の危険性をレクチャーする場面。これがなかなか説得力がある。

この映画は教条的にすぎることがなく、会議のセリフが洗練されていて良質のブラックコメディとして楽しめるところがよい。娯楽映画としてもきちんと成立している。ラストがチェレンコフ光で終わるとこも切れ味がいい。

一時期、この映画が闇に葬られていてなかなか見れなかったが、いまAmazonプライム・ビデオで観ることができるのは隔世の感がある。この映画が大ヒットして原発の危険性が周知されていたら、ひょっとしたらフクイチの原発事故は防げたのかもしれない。後の祭りである。