退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『昭和おんな博徒』(1972) / 東映が江波杏子を招いて撮ったレアな任侠映画

映画『昭和おんな博徒』(1972年、監督:加藤泰)を鑑賞。大映で任侠スターだった江波杏子東映京都に招いて制作された復讐譚。結婚引退した藤純子の後釜候補だったいう。

昭和おんな博徒 [DVD]

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  • 発売日: 2020/10/14
  • メディア: DVD

呉服屋の娘・お藤(江波杏子)は、堀川組の代貸・巽新二郎(松方弘樹)を襲うが、それは父の仇と人違いしてのことだった。事情を聞いた信二郎はお藤を許し、舎弟の三郎(遠藤辰雄)との三人で平穏な共同生活を送る。しかし新二郎が二代目を継承することを不満に思う兄貴分・森戸(渡辺文雄)が、奸計により新二郎の命を狙っていた……。

加藤泰監督のすべてを注ぎ込んだかに思える演出が冴える任侠映画における映像的な到達点、と言うと大げさかもしれないが作品的価値は大きい。とくに雨に煙る冒頭シーンの情景描写は必見。

時系列が冒頭の刃傷沙汰のシーンから一転、フラッシュバックして刃傷にいたるこれまでの経緯が語られる。そして冒頭シーンの時点に戻り、続いて映画のクライマックスになだれ込む。任侠映画によく見られる様式だが、映画らしい映画と言える。

江波杏子松方弘樹遠藤辰雄の共同生活はよく描けているのだが、江波が松方に心惹かれるようになる経緯はもっと丁寧に描いてもいいだろう。最大の欠点は、松方の仇を討つべく復讐に燃える江波がカタギを捨てて背中に刺青を彫るが、これが機能していない点である。クライマックスではきっと彫物がモノを言うに違いないと期待するのだが……。残念。あと天知茂のキャラクターもあまり活きてなくてもったいない。

結局、江波杏子藤純子の後継者になることなかったが、本作はありきたりのプログラムピクチャーとは一線を画していて、巨匠・加藤泰が撮りたいように撮りましたという雰囲気が伝わってくる力作である。また東映俳優陣のなかで主演を張る江波杏子が見れるのも貴重。

もっとも江波は任侠映画で出世したが和服よりモダンな洋装が好きだったようだ。本作でも彼女はスタイルがよすぎるためか和服姿より洋服のほうが映えるだろうと思わせる。

映画ポスター 昭和おんな博徒 江波杏子 松方弘樹 天知茂