新文芸坐の《魅惑のクールビューティ 追悼 江波杏子》で映画『再会』を鑑賞。主演は野口五郎。
岐阜で暮らしていた二人きりの姉弟。姉・葉子(江波杏子)が、恋人(池部良)とブラジルに渡航するまであと3日間。これを見送る弟・賢(野口五郎)の揺れ動く心情を叙情的に描く。
斎藤耕一は、女性が年上の男女という設定で『約束』『津軽じょんがら節』を撮っているが、本作も流れを汲む作品。男女といっても今回は姉と弟であるが……。
舞台は横浜。いまの横浜と洗練されたイメージとはちがい、港町・横浜の寂れた風景が捉えられていて映像的に見るべきものがある。江波のエキゾチックな雰囲気にも合っている。緑色のコートが素敵。
葉子と賢は10歳ほど歳の離れた姉弟。母親代わりに、ときには恋人になって育ててくれた姉の幸せを願いながらも、別離に素直に向き合えない田舎の若者の心情がよく描けている。
賢はなついてきた少女を連れ回したため警察に拘留されて、結局、姉が乗る貨物船の出港に間に合わない。『約束』と同じ「すれ違い」のエンディングである。それなのに、なぜ「再会」というタイトルなのかよくわからない。「再会を期す」ということなのだろうか。
これほど仲のよい姉弟がいるのだろうかとも思うが、姉がいる男性には刺さる映画かもしれない。