退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

藤岡弘と江守徹が武蔵を演じた時代劇スペシャル『二人の武蔵』が面白かった

時代劇スペシャル『二人の武蔵』を鑑賞。1981年にフジテレビ系で放送された単発テレビドラマ。原作は五味康祐の同名小説。

慶長9年(1604年)。作州宮本村浪人で冷静沈着な平田武蔵(江守徹)と野性味あふれる播州宮本村浪人・岡本武蔵(藤岡弘)の二人は、それぞれ各地での武者修行を終え、京都の名門・吉岡道場に向かっていた。偶然にも同じ名を持つ二人の武蔵が出会い、手合わせと斬り合いを始めるが、剣豪・佐々木小次郎東千代之介)が止めに入る。やがて平田武蔵は吉岡道場に着いて一門と手合わせするが……。

「武蔵という同じ名を持つ二人の剣士がいた」という設定がユニークな時代劇。藤岡弘江守徹の取り合わせも面白い。とくに藤岡弘は野性味溢れる武蔵を好演。鍛えられた肉体がかっこいい。

このドラマではヒロインの要素は希薄だが、秋野暢子が岡本武蔵に恋慕の情を抱く娘を演じていてドラマに華を添えている。

このドラマは難点は殺陣のキレだろう。紆余曲折のうち二人の武蔵が吉岡一門の多勢を相手にして大立ち回りを演じるクライマックスを迎えるが、殺陣にまったく冴えがないのが致命的。藤岡弘はもっと動けるはずなのにもったいない。

吉岡一門の追手から逃れて、結局二人の武蔵は切り結ぶことになる。立ち会いのさなかどこからか木の棒が飛んできて二人を止める。二人が見上げると、またもや巌流・佐々木小次郎が二人を制止したのだった。ここで幕となり、「えー」と言いたくなる。佐々木小次郎が一度も剣を振るわないのも不満だが仕方ない。

ドラマで取り上げられたのは原作小説の一部だろうが、このあとどうなるのか気になるところである。ちなみに原作小説は1960年に大映渡辺邦男監督により映画化されていて、二人の武蔵は長谷川一夫勝新太郎が演じている。いずれ見てみたい。