退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『狂武蔵』(2020) / 坂口拓のアクションが延々と続く珍作

DVDで映画『狂武蔵』(2020年、監督:下村勇二)を鑑賞。主演のTAK∴(坂口拓)が宮本武蔵を演じている。本作は斎藤洋介の遺作でもある。

2013年のイベントで上映された作品を、9年後に劇場上映するために完成させたという。上映時間91分のうち、77分に渡りワンシーンワンカット坂口拓が殺陣を行うという珍しい作品。坂口が次第に疲れていく様子が印象的。撮影中に「給水所」で水分を補給する姿がリアル。

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一応、宮本武蔵一乗寺の決闘をなぞっている。宮本武蔵の道場破りにより、吉岡清十郎と弟の吉岡伝七郎を失った吉岡一門が、9歳の又七郎を大将に据えて武蔵と決闘すると設定である。しかし武蔵の決闘は途中からどうでもよくなって、ひたすら坂口のアクションを見せつける、謎の映像作品となる。

さすがに途中からいい加減飽きてくる。ストーリーはなく、延々と殺陣が続くののだから無理もない。映画館で見たらおそらく寝ていただろう。

2020年公開に向けて新規撮影されたと思われるシーンもある。決闘から数年後だろうか、山崎賢人が率いる吉岡一門が武蔵と再び激突する。坂口の武器は刀ですらなく、鎌のついた棒状の獲物を使っている。新作パートのほうが殺陣はキレがあって見応えがあるが、すぐに終わってしまうのが残念。山崎賢人との決着もつかないまま終劇。

どうして、こうした長時間にわたるワンシーンワンカットの殺陣を撮ろうと思ったのだろうか。DVDを特典によれば、坂口率いるグループが、園子温監督による初の時代劇映画の準備をしていたが、企画が頓挫する。せめてこれまでの成果を映像に残そうということだったらしい。

タイトルから時代劇かと思って借りてきた。珍しいモノを見たなとは思うが、期待とは大きくちがう内容に驚いた。