NHK正月時代劇「巌流島 小次郎と武蔵」(1992年)を鑑賞する。
巌流島の決闘をテーマにした時代劇だが、タイトルで小次郎が前に置かれていることからもわかるように、珍しく佐々木小次郎を主役に据えていて、吉川版武蔵とは異なる、ジェームス三木の脚本によるユニークな切り口の時代劇。細川藩の権力闘争に巻き込まれた二人の剣士を描く。
関ヶ原の戦いの後、合戦の主役が剣から鉄砲に移り、武士のあり方も変化した時代が舞台。天下の剣豪とした名を馳せていた佐々木小次郎(渡辺謙)は細川藩に召し抱えられ、小倉城主・細川忠興(夏八木勲)からも一目置かれていた。そんな小次郎を邪魔に思う鉄砲派は、浪人ながら高名な宮本武蔵(滝田栄)と小次郎の決闘を画策する。
共演者では武蔵が巌流島に赴くときに舟を操る船頭役のガッツ石松がいい味を出している。また小次郎の愛人を演じる名取裕子がドラマに花を添えている。
巌流島の戦いでは、武蔵が持つ木剣が小次郎の刀と打ち合うときに木剣の先端部が削ぎ落とされるシーンが印象的だった。抜刀術の心得があるという武蔵役の滝田栄の殺陣が冴えているのも特筆できる。滝田は出演作が少なく殺陣を見る機会があまりないのが残念だが、本作はそれを堪能できる。