退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

萬屋錦之介主演のテレビ時代劇『それからの武蔵』(1981)が終了!

BSジャパンで午前中の帯で放送されていた萬屋錦之介主演の『それからの武蔵』(1981年、全13回)が終了しました。巌流島の決闘の後から晩年の武蔵を描いたドラマでしたが、予想どおりかなり地味でした。宮本武蔵を取り上げた映像化作品の多くが巌流島で終わるのもうなずけます。

このテレビ時代劇は、小山勝清の同名の歴史小説を原作にして、1981年新春、当初東京12チャンネル(現・テレビ東京)の12時間超ワイドドラマで放送され、今回放送されたのは全13回に再編集されたバージョンです。

当初から分割して放送されるのが決まっていて分割して制作作業が進められたのでしょう。例外はあるものの各回に武蔵の殺陣が用意され山場があるように配慮されています。が、かえってそれがこのドラマを映画のように大きな流れでつくることができなかった一因になっているようです。

そもそも巌流島以後の30年間を一本のドラマにまとめることに無理だったのでしょう。登場人物が次々に呆気なく死んでいくのはドラマの構成上仕方ないのですが、出演者が豪華なだけにもったいない。

ざっくり言うと期待したほどは面白くなかったのですが、いくつか良かった点を挙げておきます。

ひとつめは萬屋錦之介の殺陣。どの役を演じても錦之助の殺陣はカッコいいのですが、二刀流を堪能できるのは本作の美点でしょう。危機に陥ることもなく天下無双なのもいっそ清々しい。

ふたつめは中村嘉葎雄。盲目の琵琶法師(実は公儀隠密)の田原森都役で出演して錦之助との兄弟共演を果たしています。前半ではドラマに深みを与える美味しい役でいい味を出しています。

みっつめは梶芽衣子。足利将軍の孫という由利姫役。共演していた宇都宮雅子に比べて、なんとお姫様の衣装が似合わないことか(笑)。そう思っていると戦争孤児を引き取る施設を立ち上げたり、挙句には物乞いになったり、武蔵を慕うあまりに波乱万丈の人生をおくることになります。結局どうなったのは語られません。気になります。

よっつめは武蔵の最期。最終回には武蔵の特殊メイクが進化して、錦之助がいまに伝わる武蔵の肖像そっくりの風貌になります。赤い羽織に二刀持った肖像画です。この姿は必見。そして最期は達磨の掛け軸を二刀で八の字に切って仰向けに倒れて往生。なかなかの熱演でした。

それからの武蔵(一)波浪篇 (集英社文庫)

新春の大型時代劇は、おとそ気分で見るので大味で冗長になるのは仕方ない面もありますが、それなりに楽しめたのでよしとしましょう。それにしても萬屋錦之介の殺陣はすごい。もっと見たいものです。