接触確認アプリ「COCOA」で新型コロナの陽性者との接触がユーザーに通知されない不具合が見つかった問題がクローズアップされ、厚生労働省は4月16日、検証結果を発表した。
アプリの保守管理を巡り「適切にテストが行われなかった」「業者任せにしていた」などの課題を挙げている。
この問題については、かなり前に業界誌「日経コンピュータ」(2021年3月4日号)の緊急版「動かないコンピュータ」でも取り上げられていた。この記事では調達過程における問題をとくに指摘していたが、今回の厚労省からの検証結果ではあまり触れられていないのが気になる。
テストが不十分だったというのは結果であり、根本的な原因は業者の選定プロセスだろうし、もっと遡れば発注者側の能力不足ということに帰着する。
以前、私も官公庁向けのシステム開発に関わっていた時期があるが、随分ひどいなと思ってことが何度もある。いちばんダメだと思ったのが、多くの官公庁側の発注者が何を開発するのか十分に理解していないことだ。これで発注しようとするのだからお笑いで、要件定義もあいまいでもうワケがわからない。
仕様すら決められないなら、まず要件定義や基本設計の段階からプロの委託しろよ、と思うが、予算の都合なのか一気にシステムを開発しようとする。これで正確な見積もりなどできるはずがない。
それでも営業は適当な金額で応札して、運がわるいと落札しまい、お鉢が技術部門の実働部隊にまわってくる。そんな状況でプロジェクトが上手くいくわけがなく、「とりあえず作った」みたいなシステムが死屍累々となるのは言うまでもない。テキトーなところで検収してもらい、「はい、さよならよ」ということが多々あった。税金の無駄遣いも甚だしい。
今回の接触確認アプリ「COCOA」を件を見ると、当時とあまり状況が変わっていないことに暗澹とした気分になる。この秋、「デジタル庁」なるものができるらしいが、果たして官公庁のシステム開発の状況は好転するのだろうか。