この本は、これまで失敗し続けてきた政府系の情報システム関連のプロジェクトを紹介しながら総括を試みている。
「消えた年金」「特許庁システム刷新の失敗」「マイナンバーカードでのつまづき」などについては聞き覚えがある人も多いのではないか。また最近も新型コロナの感染拡大にともない、接触確認アプリ「COCOA」や「特別定額給付金の支給」などのテイタラクは記憶に新しい。
この本は「日経コンピュータ」誌などの雑誌記事を基にしているためか、個々の失敗事例を丹念に追いかけているわりには、俯瞰的に政府系の情報システム関連のプロジェクトのどこに共通の問題があるかについての掘り下げが足りないように思う。
私が読んでまず感じたのは、発注側である政府のスキル不足に大きな原因があるということ。2年ほどで人事異動するために専門的知見が蓄積されないということもあるらしい。そもそもやる気がなく、片手間でやってるから始末に負えない。
私もここに紹介されているシステムほど大規模ではないが、かなり前になるが官公庁のシステム開発に携わったことがある。そのときの担当者のやる気のなさにはうんざりした。自分が何をつくりたいのかまったく理解していない。まずヒアリングして何をどうしたいのか決めるとところから始めるアリサマだ。これで営業部隊はよく札を入れたなと思わなくもないが、これは社内の問題である。
ちょっと面白かったのは韓国の事例を引いているところ。政府が情報システムの専門家集団を抱えていて、それが上手く機能しているという。こうした成功事例に学ぶことも必要ではないか。
この本を読んで、わたしがSEやっていた頃とあまり変わってないなと思った。デジタル庁が鳴り物入り発足したが、この本のインタビュー記事を読む限り、多くは期待できないそうにない。困ったものだ。