退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】矢部太郎『大家さんと僕 これから』(新潮社、2019年)

お笑いコンビ「カラテカ」の矢部太郎のベストセラー『大家さんと僕』の続編かつ完結編。タイトルに「これから」とあるのに完結なのは意味深である。

大家さんと僕 これから

大家さんと僕 これから

  • 作者:矢部 太郎
  • 発売日: 2019/07/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

前作は手塚治虫文化賞短編賞を受賞して大きな話題となった。本作には授賞式の様子も描かれている。

大家さんと僕

大家さんと僕

  • 作者:矢部 太郎
  • 発売日: 2017/10/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

大家さんが亡くなったことは読む前に知っていたので、どのように物語を終えるのか気にかけながら読み進めていった。大家さんが入院するあたりから話が生々しくなっていく。大家さんが亡くなる直接の描写はないが素敵な終わり方だった。あの絵柄の漫画でこれほどの表現ができるとは驚きだ。

表紙は伊勢丹のマークにふたりで座っている図だが、伊勢丹の歴史を語るなど大家さんの思い出語りがお気に入りだった。戦時中の疎開の話、戦後の闇市、女学校時代などなど……。

ふたりの関係は他者からは想像できないほど親密に思えた。これほど相性がよいふたりが出逢うのは奇蹟というほかない。これが実話なのだから世の中は素晴らしい。

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