映画監督の森崎東さんの訃報が届いた。92歳。
森崎監督は1956年に松竹入社。多くの喜劇を手掛けて人情喜劇の名手として知れている。山田洋次監督の助監督を務めていたこともあり、人気シリーズの1作目『男はつらいよ』(1969年)の脚本を山田監督ともに執筆している。自らもシリーズ第3作『男はつらいよ フーテンの寅』(1970年)を監督を務めた。
代表作としては『時代屋の女房』(1983年)、『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』(1985年)、『ペコロスの母に会いに行く』(2013年)などを挙げることができる。
またレアな作品だが、『美味しんぼ』(1996年)も見逃せない。言わずと知れた人気コミックの映画化であるが、大胆に設定を変更してほとんどオリジナル作品となっている異色作。さらに実の親子である三國連太郎と佐藤浩市が親子役で共演している貴重な作品となった。一見の価値あり。
しかし今もっとも観たいのは、松竹時代に撮ったプログラムピクチャーとしての喜劇映画である。なかなか見る機会はない。いずれ名画座で追悼特集が組まれるだろうが、そのときは監督デビュー作『喜劇 女は度胸』や、森繁久弥主演の『喜劇・女は男のふるさとョ』などを観てみたい。
当時の人情喜劇にどれだけ普遍性があるか確認したい。