ABEMAの大友克洋特集でアニメ映画『スチームボーイ』(2004年、監督:大友克洋)を鑑賞。『AKIRA』『MEMORIES』に続く大友による3作目のアニメ映画である。今回10年ぶりぐらいに見た。
舞台は産業革命期のイギリス。マンチェスターに住むレイ(声:鈴木杏)は、発明一家に生まれ育った機械好きの少年だった。ある日、レイに祖父ロイド(声:中村嘉葎雄 )から謎の金属球体(スチームボール)が届くが、レイはオハラ財団に捕まえられてロンドン万博のパビリオンにつれて行かれる。
そこに、かつてとはまったくちがった容姿となった父・エドワード(エディ)(声:津嘉山正種)が現れて、スチームボールの重要性を伝える。パビリオンはスチームボールを動力源とする要塞「スチーム城」だった、レイは父の仕事を手伝い始めて、オハラ財団会長の孫娘スカーレット(声:小西真奈美 )と出会う。
万博が始まると財団は、各国の軍事関係者を招いて新兵器のデモンストレーションのため英軍に攻撃を仕掛ける。万博は大混乱に陥るが……。
大友の代表作であるアニメ映画『AKIRA』に比べるとストーリーは単純明快でわかりすい。しかし物語に起伏に乏しく、中盤以降、延々とドンパチが続いて次第に飽きてくる。こういう映像を作りたかったのかなというの伝わってくるが、もう少しコンパクトにまとめてほしい。アニメーションを勉強している人には映像に見るべき点は多々あろうが、一般観客にとっては苦行かもしれない。
もう一点指摘したいのはキャラデザである。ヒロインのスカーレットが全然惹かれないのはが難点。大友克洋の作品には美少女は出てこないのはわかるが、娯楽作品として大衆受けを考えるならまずここをなんとかするべきだろう。
また主要キャストに、声優ではなく舞台や映画などで活躍している役者を起用しているのも本作の特徴である。これはジブリの影響か。鈴木杏や小西真奈美が意外に上手くて、器用だなと驚いたが、中村嘉葎雄などは「まんま」で対照的だ。総じてこの試みは悪くない。しかしここで話題性を求めるなら肝心のストーリーやキャラデザにも配慮がほしかった。
このアニメ映画は興行成績は惨憺たる結果だった。やはりコケた作品にはそれなりの理由があるということだろう。それでも映像はスゴいので、日本アニメの古典として一度は見ておくべき作品だろう。