世田谷文学館で開催中の企画展「小松左京展―D計画―」を見てきました。『日本沈没』『復活の日』などのSF大作の数々で知られている作家・小松左京(1931-2011)を掘り下げた企画展です。
タイトルにある「D計画」とは、小松左京の代表作『日本沈没』の作中に遂行される日本政府のプロジェクト名で、D1計画とD2計画に分かれるが詳しくは小説を参照のこと。
順路の最初は年表です。戦前生まれの作家の場合、まず先の戦争が作家の人生にどのように影響したかをチェックしています。小松は徴兵されるにはまだ若かったようですが、戦争が作品に大きな影響を与えていることは伝わってきました。その一端は『地には平和を』にみることができます。
戦後、小松は学制改革の前に「旧制高校」時代を第三高等学校で1年間だけ経験していて、当時の仲間たちとの写真の展示されていました。。この頃を「人生で一番楽しかった年」だったと回想したいるのが印象的でした。その後、京都大学に入学して、高橋和巳や三浦浩たちと知り合っています。
卒業後、妻のお気に入りのラジオを手放すほどまで追い詰められますが、次第にSF小説で頭角を現し、SF作家として大成したのは周知のとおりです。
展示はやはり代表作『日本沈没』が大きなスペースを占めています。執筆時に使ったという、当時としては珍しかったキヤノン製の卓上電卓の展示もあり気分は盛り上がります。『日本沈没』とい言えば、松竹による幻の映画企画『日本沈没1999』(監督:湯浅政明)の資料展示があり、これは貴重でした。さらにNetflixで配信予定のアニメのパネルもあり、いまのアニメ技術で日本沈没を描くとどうなるの気になるところです。
さらに映画製作に大きく関与した『さよならジュピター』(1984年)のコーナーもあり、特撮で使われたミニチュアに展示がありました。またメイキング映像でしょうか、関連映像が上映されていましたが、時間がなくて残念でした。じっくり見たかった。
順路の最後は大阪万博のコーナー。まだ若い時期に国家プロジェクトに関わった興奮が伝わってくる気がしました。いまから振り返ると、この時期が日本のピークだったのかもしれません。
映画ファンとしては、映像化された小松左京の作品はたくさんあるのだから、もう少し映像系の展示が多いとうれしいなと思いましたが、映画の企画展でははないので仕方ないでしょう。なかなか楽しめました。