退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『二十四の瞳』(1954) / 言わずもがなの日本映画史上の名作

新文芸坐の《没後10年 高峰秀子が愛した12本の映画 ~名女優自ら選んだ、名匠たちとの仕事~》という企画で、映画『二十四の瞳』(1954年、監督:木下恵介)を鑑賞。壺井栄の同名小説が原作。高峰秀子特集となれば、何をおいても本作だろう。

昭和3年、瀬戸内海の小豆島の分教場に新任女教師・大石先生(高峰秀子)が赴任していくる。12人を生徒たちを担当することになるが、島に蔓延する貧困と戦争に向かっている時勢には逆らいようもにあい。時代の波は子どもたちの運命に大きく変えていく……。


二十四の瞳 (デジタルリマスター2007)予告

師範学校出の新任教師時代から、戦後の中年期までを見事に演じた主演の高峰秀子はもちとん素晴らしいが、注目すべきは生徒たちだろう。小1、小6、そして成人後でそれぞれ似た人物を配しているところがいい。とくに子どもたちは公募により選ばれたらしいが、素の演技が本当にすばらしい。いまなら子役が事務所から集められるのだろうが、本作のような味は出せないだろう。

また映画音楽として童謡唱歌が効果的に使われていることも特筆できる。「こんなの反則だ」というむきもあろうが、涙腺を刺激して止まないことは間違いない。ただしいまの子どもたちに、この映画で使われている歌に馴染みがあるかわからない。あらためて聞くと「仰げば尊し」の歌詞など文語で結構難しい。現代には現代の「仰げば尊し」があるのかもしれない。

こうした古い日本映画が映像や音声が劣化していてがっかりする場合もあるが、今回の上映は2007年に修復さえれたデジタルリマスター版だった。木下恵介監督の生誕100年を記念したプロジェクトだったようだが、他の作品も公費を投じても修復してものだ。

なお劇場に小豆島の写真が展示されていたが位置は下のとおり。いまもこの映画の舞台だったいうことを打ち出しているとのこと。一度は行ってみたい。

f:id:goldensnail:20200122235645j:plain