【映画感想】『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』(2018) / シリーズ第3作。専業主婦の家出物語

DVDで映画『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』(2018年、監督：山田洋次）を鑑賞。「家族はつらいよ」シリーズ第3作。三作目にして登場人物が観客に定着して熟成の度合いは高い。

妻よ薔薇のように 家族はつらいよlll [DVD]

周造夫婦（橋爪功、吉行和子）が帰省中の平田家。2階で掃除中の史枝（夏川結衣）がうたた寝しているすきに空き巣に入られ、冷蔵庫にこっそり保管してあったへそくりを盗まれてしまう。海外出張から疲労困憊で帰宅した幸之助（西村まさ彦）は史枝に心ない言葉を浴びせる。ショックを受けた史枝は翌朝、家出してしまう。一家の主婦がいなくなった平田家は家事がまわらず大混乱。あたらめて専業主婦のありがたみを実感するが……。

映巨匠・山田洋次監督／映画『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』予告編

楽しい喜劇かと思いきや、「専業主婦の労働価値」という根源的なテーマに取り組んだ作品で真面目に見てしまう。それでも深刻になりすぎずに人情喜劇としてまとめているのは監督の手腕だろう。

今回は長男夫婦がフォーカスされている。このファンタジーとも言える平田家の嫁は夏川結衣だけ。長女の中嶋朋子は税理士事務所を営み、次男の嫁・蒼井優は看護師として働いてる。そんな環境での専業主婦は理解されにくいのかもしれない。

まあ結局、夫婦は仲直りして大団円になるわけだが、家出した史枝を幸之助が車で迎えに行く場面で突如雨が降り出すシーンはうまいと思った。

また次男・妻夫木聡が高校時代に、兄嫁・夏川結衣に憧れていたいう描写にも注目したい。15年前ぐらいのことであろうか。「たしかに、あの頃の夏川は美しかったなあ」と感慨ひとしおの男性諸兄も多いのではないか。

現在、阿部寛と夏川結衣が出演していたテレビドラマ「結婚できない男」の続編「まだ結婚できない男」が放送されている。続編に夏川は出演していないが、このドラマのことを思い出してしまう。本作での夏川の体型や容姿は役作りだと思いたい。

ラストで次男の嫁・憲子（蒼井優）の妊娠が暗示される。次作は次男夫婦の物語になるのだろうか。このシリーズは、安心して見られる家族映画とし貴重である。こんな家族はどこを探してもないファンタジーだとわかっていても、ほのぼのする。