退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】『コンビニオーナーになってはいけない 』(句報社、2018年)

この本は現役のコンビニオーナーが語る、コンビニ経営のさまざまな問題を紹介している。ふだん知りえないコンビニ業界の内部事情を知ることできる良書。

最近、コンビニの24時間営業をめぐり業界が揺れている。理不尽なフランチャイズ契約や本部の対応についに店舗オーナーがついに声をあげ始めた。この騒動を受けて、問題がコンビニ最大手セブンイレブンの社長交代にまで発展したのは記憶に新しい。

面白かったのはオーナー研修の内容とコンビニ会計の章である。いずれも表に出てこない情報であり貴重である。とくに本部が絶対に損しない「コンビニ会計」はよくできていると感心した。一読の価値がある。

ただし本書はコンビニ業界の闇がよく書けているが、もっぱらオーナーからの視点であることには注意する必要がある。問題の一面を捉えているのにすぎない。物事には必ず他の面があるはずであり、本部からの視点、そして本部内部の労働環境、さらに消費者やコンビニバイトの視点も欠けている。これらも併せて見ていかないとコンビニ問題の本質はわからないだろう。

まず思ったのは、これほどコンビニ経営が理不尽かつ不公正で採算がとれる可能性がないのであれば、悪評が広がりフランチャイズ契約をするオーナーがだれもいなくなるのではないか、という疑問である。しかし街にはコンビニが溢れている。コンビニ経営を始める人はみんなだまされているのだろうか。そんなわけでもないだろう。

苦境に立っているオーナーの心の叫びは伝わっってくるが、問題の全体像はもうひとつ見えてこない。成功している人とのちがいはどこにあるのだろうか。オーナーには安易に契約書に署名した責任はないのだろうか。こうした重要な契約を結ぶときに、事前に納得するまで調査しないのだろうか。このあたりは十分触れられていない。

たしかに日本にフランチャイズ契約について法的規制がないのは問題かもしれないが、それは政治の問題である。さすがにオーナーは契約を強制されたわけでもないし、だまされたわけでもないだろう。そんな事実があれば当然契約は無効である。

本書には、フランチャイズ契約についての訴訟の判決に、オーナーに同情的な補足意見がついている事例が紹介されていた。補足意見は判例ではないし、法的な効力はない。フランチャイズ契約が法的に有効なのははっきりしているようだ。

しかしながら、いくら法的に問題がないといっても、今回のようにコンビニ経営自体が社会問題になれば、当然経営上支障が出るだろうし、本部とオーナーが共存共栄できなければ未来がないことは自明であろう。

さらに消費者の立場から一言いうならば、いくらコンビニが便利だからといっても誰かの不幸の上にその便利さがあるのだとすれば、あまり気持ちのいいものではない、ということだ。そうかといって、「セブンイレブン」の名称のように、終電前の夜11時に閉店されても困る。技術革新を取り入れるなどして、なんとか妥協点を見つけてほしいものである。

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