退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

「最低賃金の引き上げ」で思ったこと

中央最低賃金審議会厚生労働相の諮問機関)は8月2日、2022年度の最低賃金を全国加重平均で31円を目安に引き上げるよう厚労相に答申した。過去最大の引き上げ額だという。

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例年より早いスケジュールに思えるが、10月から適用される見通し。ちなみに東京都の最低賃金は現在1041円だが、答申によれば1072円になる。

例年、恒例行事のように行われている最低賃金の答申だが、どういう基準で決めるのはまったくわかりにくい。報道でも具体的な議論や経済予想、数学モデルが提示されることもない。

最低賃金にはさまざまな利害関係者の思惑が絡んでいる。

第1には賃金を受け取る労働者の視点である。普通に考えて最低賃金は、ぜいたくはあまりできないかもしれないが、まあまあ生活できる程度の賃金水準でなければならない。

例えば、月に20日、1日8時間は働くとすると月160時間労働となる。最低賃金1072円としれば、額面ででおよそ月17万円、年収に換算して205万円余という水準である。これで十分かどうかと思うかは人それぞれだと思うが、まあ東京でこの年収はかなりキビシイ。

第2は雇用主の視点である。当然、最低賃金が引き上げられば従業員に払う給与も増えて経営を圧迫するし、加えて社会保障費の企業負担も増える。

それでも労働者がまともに暮らせない賃金水準でないと、経営が成立しないビジネスは社会に必要ないように思う。そうした企業は市場から退場してもらうのが社会のためだろう。

一時的に雇用が減るかもしれないが、ダメな企業は淘汰されたあとで生産性を上げていくしかない。低水準賃金の労働者が合法的に存在している現状が変革を妨げているとも言える。

第3はマクロというか普遍的な視点である。賃金水準があがれば経済の好循環により景気浮揚が期待できる。

実際はそれほど簡単ではないだろうが、さすがにいまの賃金水準は海外と比較しても低すぎる。欧米の先進国では最低賃金が時給1500円を超えているのは普通だし、アメリカ西海岸の都市部は時給2000円もめずらしくない。

日本は先進国ズラしてG7に参加しているが、実態はこんなものである。いまだに全国平均の最低賃金が1000円以下というのは国辱にすら思えてくる。

このように私は、最低賃金は低すぎると思うが、エラい人たちには東京の最低賃金が時給1072円となる根拠があるのかもしれない。そうした算出根拠が報道されないのが不満なのである。