退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『やくざの墓場 くちなしの花』(1976) / ヤクザと警察との黒い癒着を描いた渡哲也x深作欣二のコンビ作

YouTubeの「TOEI Xstream theater」チャンネルで配信されていた、映画『やくざの墓場 くちなしの花』(1978年、監督:深作欣二)を鑑賞。主演は渡哲也、脚本は笠原和夫。タイトルは主演の渡のヒット曲「くちなしの花」にちなんでいる。

暴力団の衝突により発砲事件が頻発するなか、2年前にやくざ幹部の逮捕の一件で誤って射殺事件を引き起こした黒岩刑事(渡哲也)が四課に戻ってくる。おとり捜査や別件逮捕などの強引な捜査や、以前射殺した凶悪犯の情婦との関係が露見して、警察本部の幹部(大島渚成田三樹夫藤岡重慶金子信雄たち)から激しく叱責される。一方、黒岩は警察幹部連中が裏で暴力団と癒着していることに強く反発し、組長岩田(梅宮辰夫)と服役中の幹部の妻(梶芽衣子)との距離を詰めていく……。


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映画『仁義なき戦い』の流れを組むヤクザ映画であることにはちがいはないが、警察とヤクザとの癒着問題や在日問題などを取り入れて、新機軸を提示することに成功しているし、豪華な出演者たちの濃い芝居とあいまって見応えのある作品に仕上がっている。

東映映画の渡哲也は新鮮。さすがにかっこいい。渡は関西出身であるが、芝居で関西弁を披露する機会は少なかった。その点でもレアな作品である。後にテレビドラマ『西部警察』で見せる、レイバンのサングラス姿の刑事役はこの映画が先駆けであろう。

ラストで黒岩は怒りを爆発させて、警察幹部と暴力団幹部が談笑している警察内の応接室に乗り込み、暴力団の大物(佐藤慶)を射殺、そのまま逃亡するが警察署の前で警察学校同期の日高(室田日出男)に射殺されて、そのまま終劇。エンドロールで渡哲也の「くちなしの花」が流れるという、しびれるエンディング。

でもね…。ヤクザと警察との黒い癒着に激昂するのはいいが、黒岩自身も暴力団組長の梅宮辰夫と兄弟の盃を交わしてるよね。アレはいいのかしらん。随分と身勝手な話だと思った。

あと見どころは、警察本部長役に大島渚監督が俳優として出演しているところ。正直下手なんだけど懸命に演技している大島渚に姿は貴重。

冒頭、「昭和51年度文化庁芸術祭参加作品」のクレジットが出るが、実際は参加していない。この映画で参加しよう考えるほうがどうかしているが、さすがに当局からの圧力があったのか東映は参加を取り下げている。なにはともあれ「TOEI Xstream theater」チャンネルに相応しい、エキセントリックな映画だった。

また映画は面白かったが画質が悪すぎる。HD 1080pで配信されているが、画質がSD並の画質でがっかりだ。映画によっては高画質のときもあるので、この映画には高画質のデジタル映像がないのかもしれない。なんとかしてほしい。もったいない。