退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『兵隊やくざ』(1965) / 勝新太郎と田村高廣のコンビが素晴らしいバディもの映画の名作

DVDで映画『兵隊やくざ』(1965年、監督:増村保造)を鑑賞。ソ連国境近くに駐屯している旧陸軍の部隊を舞台に描かれるバディもの。本作のヒットを受けて「兵隊やくざ」シリーズとして大映で8作が制作された。主役は勝新太郎、助演は田村高廣。白黒映画。大映映画。

昭和18年ソ連国境近くに駐屯している関東軍部隊。そこにやくざの用心棒をしていた札付きの暴れん坊・大宮(勝新太郎)が入隊してくる。まもなく大宮は風呂場で乱闘騒ぎを起こし、インテリ上等兵の有田(田村高廣)のもとに預けられる。有田は大卒だがわざと幹部候補生の試験に落第したという変わり者だった。指導をまかされた有田は乱暴者の大宮の手を焼くが、次第に大宮の自由奔放さに惹かれるのだった……。


www.youtube.com

勝はすでに座頭市の成功で映画界に一定の地位を占めていたが、このシリーズで芸の幅を大きくひろげている。日本映画の代表的な娯楽映画のひとつとして挙げられるだろう。

背後で戦争が人の品性を失わせるという普遍的なテーマを描きながら、娯楽映画としても立派に成立しているのは増村監督の手腕によるものだろう。その後、シリーズ化されたのも納得できる。

ともあれ勝と田村のコンビの妙が本作の美点だろう。ヤクザな勝はともかく、インテリ上等兵の田村のキャスティングは見事としかいいようがない。増村もインテリだったことも奏功した一因だったのかもしれない。。

舞台は暴力がまかりとおるヒエラルキーがはっきりとした旧軍の世界。公開当時はまだまだ従軍経験のある人がスタッフや観客にに多かったはずで、彼らが自らの体験と映画を重ねて何を思ったのだろう。