飲食店やコンビニのアルバイトが悪ふざけしている様子をネットに投稿して炎上する事件があとを絶たない。いわゆるバカッター問題である。こうした行為は企業に重大なダメージを与えることから「バイトテロ」と呼ばれるようになった。
くら寿司のケースでは、従業員が切った魚をごみ箱に投げ入れ、すぐに拾ってまな板の上に置き直している映像がSNSに投稿された。くら寿司は、この授業員に対し、刑事、民事での法的措置をとることを表明しており、これまでにない厳しい態度に出ている。「多発する飲食店での不適切行動とその様子を撮影したSNS投稿に対し、一石を投じるため」だという。
こうした問題は、セブン-イレブン、バーミヤン、すき家、ファミリーマートでも起きているので、くら寿司だけの問題ではなく、飲食店やコンビニのアルバイトに共通の問題のようだ。
この問題の背景に何があるのか考えてみた。
バカッターはどんな人たちなのか
まず明らかにしておきたいのは、バイトテロを起こすバカッターたちの人物像である。バイトテロの報道は多いが、バカッターのプロファイリングにまで踏み込んだ報道はほとんどない。もちろん個人情報保護と事情もあるだろうが、まずこうした事件を起こすバカッターがどんな人たちなのかを解明することが重要だろう。
一言で底辺バイトと言っても、バイトで生計を立てているヤンキー上がりなのか、小遣い稼ぎに腰掛けで働いている大学生では事情はまったくちがう。また大学生といってもピンキリなので、その学生の質についても着目する必要があるだろう。
「承認欲求」の現れなのか
こうした事件が起こると、よく持ち出されるのは心理学でいうところのマズローの「承認欲求」である。詳しくは書かないが、日本にいれば少なくとも「生理的欲求」や「安全の要求」といった低次の基本的欲求は満たされている場合が多い。
ここで問題になるのは「承認欲求」であり、「自分が集団から価値ある存在と認められ、尊重されることを求める欲求」だと定義されている。
底辺バイトが誰からもまともに相手にされず、悶々しているなかで不適切動画を投稿したSNSのなかの反響により、空疎な「承認欲求」を満たそうとしているのではないかという仮説である。
これも前に挙げたバカッターの人物像に大きく関わってくる。まだ何者でもない大学生が「価値ある存在」を求めるのもおかしな話だが、もう人生の負け組が確定しているヤンキー上がりの輩が自暴自棄でSNS投稿に走るとうのはわからない図式ではない。
時給アップで防げるのか
一方で時給が安すぎるからこうした事件が起こるという意見もある。最低賃金レベルの賃金で雇用して、責任のある仕事はまかせるのは無理があるという。低賃金だから、仕事に対する愛着が湧かないし責任感も生まれない、という主張である。
最低賃金レベルの労働者であっても、やっていいいことやっていけないことぐらいわかる分別を期待できないのだろうか。
では高給取りはモラルやロイヤリティが高いかというと、世間を見ればそうでもないないことはすぐにわかる。ただし高給取りは損得勘定ができるからバカッターのようなマネはしないだろうが、「バイトテロ」するような人たちをメンタリティはあまり変わらないだろう。
都内だと現在の最低賃金は時給1000円ぐらいだが、これを1500円にしたらバイトテロを防げるかというと、そういうものでもないだろう。時給とロイヤリティはまったく関係ない。
企業は何をすべきか
では企業は何をすべきだろう。いまの枠組みのなかであまり手の打ちようがない。
くら寿司のように、罰則や管理を厳しくするのはひとつの方向性だろうが、これでバイトテロを防げるのか疑問である。なにしろ敵は後先考えずに行動するバカなのだから。では企業ができることで効果が期待できることは何だろう。
第一にバイト採用時の選別の強化。バイトテロをやりかねない不穏分子を採用時に事前に排除すること。今回の事件もバカッター予備軍を事前に選別できなかった企業側の責任も重い。第二にシフトの組み方を工夫して、同じ時間帯にバカを集めないこと。それぐらいだろう。まともな人が店内にひとりでもいれば、バカも悪乗りできないだろう。
まあこの程度のことは現場では常識なのかもしれないが、それができないとほど人手不足が深刻なのだろうか。バカを採用しないと現場がまわらないのであれば、昨年末に可決された改正入管法で打ち出された「外国人労働者の受け入れ拡大」の方針も致し方ないのかもしれない。日本人のまともな労働力はすでに払底しているのだから。
もう日本はダメかもしれんね。