退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『武士道残酷物語』(1963) / 戦国時代から現代まで7つのエピソードで綴る残酷物語

DVDで映画『武士道残酷物語』(1963年、監督:今村正)を鑑賞。飯倉家の先祖たちが遭遇した残酷な出来事を時代を越えてオムニバス形式で綴る異色作。主演の中村錦之助がそれぞれのエピソードで7役をこなしている。白黒映画。

ダム入札を落札するため競合他社に勤務する恋人を利用する現代のサラリーマン・飯倉の悲劇から映画は始まる。その後、時代は一気に戦国時代に飛び、主家のために殉死させられたり、男根を切られたり、娘を幕閣に差し出したりする封建時代に起こった飯倉家の残酷なエピソードが登場する。そして明治維新後も国家のために戦死する話が続く。ラストで冒頭のサラリーマンのエピソードに戻るが……。


「武士道残酷物語」(公開年月日 1963年04月28日) 予告篇

飯倉家の先祖たちが主君や国家のためという名目で被った悲惨な物語を延々と見せられる暗い映画。時代が現代に戻ってきていよいよ大転回があるかと期待したが、そうでもなくあっさり映画が終わるので、やや食い足りない。

こうした日本人をステレオタイプで捉える日本人論は海外でウケたのだろう。第13回ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞している。なんでもかんでも武士道で片付けられても困ると思ったが、この時期の日本のサラリーマン社会は、企業の年功賃金や終身雇用が健在であり、封建時代の「主家」や戦前の「国家」に重ねらても違和感がなかったのだろう。

この映画が発表されたのは1963年。それから半世紀以上経ち、さすがに日本のサラリーマン社会も大きく変わった。年功賃金や終身雇用は今は昔。隔世の感がある。