新文芸坐で映画『太陽の蓋』(2016年、監督:佐藤太)を鑑賞。併映の『FAKE』を目当てで出かけたのであまり期待しないで見る。
福島原発事故から5年。東日本大震災と福島第一原子力発電所事故を題材とした映画。首相官邸の記者クラブに詰める新聞記者・鍋島(北村有起哉)の視点から、首相官邸内で震災や原発事故の対応に追われる日本政府要人たちを描く。
菅直人首相(三田村邦彦)、枝野幸男内閣官房長官(菅原大作)、内閣官房副長官福山哲郎(神尾佑)など当時の内閣の政治家が実名で登場しているのがミソ。また政府の動きと並行して、原発事故に翻弄される市井の人たちも描かれる。
正直、豪華な再現ドラマという印象は拭えない。このフクイチの原発事故についてはあまりに膨大な情報がインプットされているので、安易に一面的な見方をすることができなくなっている。2時間程度の尺ではどうしても物足りないく思える。
さらに当時の政府関係者にどの程度取材したか分からないが、どうしても当時の政権に擁護する内容になっているのではないか。映画を見た限り、「想定外の事故が起こったので誰が指揮をしていても結果は変わらなかった」と伝わってくる。本当にそうだったのだろうか疑問だが、この映画を見ただけではそれは分からない。
それでも当時を思い出して記憶を新たにすることはできた。ともすれば一昔前の話に思えるのだが、わずか5年前というのだから人の記憶とはいい加減なものだ。原発再稼働の是非については意見は様々だろうが、ときには当時を思い出してみることは必要だろう。
最後の出演者に触れておく。菅首相を演じたのが三田村邦彦は、二枚目すぎて美化されすぎている。菅首相が三田村のようなルックスだったら国民の印象も違っていたかもしれないと思わされる。ヒロイン不在の映画だが、主人公・鍋島の妻を演じた中村ゆりがよかった。一児の母という役だったが相変わらず美しい。紅一点として美味しい役だったのではないか。