先日、新文芸坐で『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(2017年、監督:ジョー・ライト)を見てきた。第二次世界大戦初期に挙国一致内閣の首相に就任したウィンストン・チャーチルの姿を描く実録映画。主演はゲイリー・オールドマン。
ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男 ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]
- 発売日: 2018/10/11
- メディア: Blu-ray
第二次世界大戦の初期、枢軸国との宥和政策を巡る政争の結果、主戦派であるウィンストン・チャーチル(ゲイリー・オールドマン)が首相となり、挙国一致内閣を組閣する。しかし戦局は劣勢。ダンケルクに孤立したイギリス陸軍30万人は全滅寸前にまで追い詰められる。徹底抗戦か和平交渉か、チャーチルは決断を迫られる……。
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まずチャーチルをゲイリー・オールドマンが演じたことに驚く。そして日本人のメークアップアーティスト辻一弘の特殊メイクの技巧もすばらしい。この映画はストーリーラインが単純なだけに、俳優たちの演技にかかっているが、チャーチルを見事に演じたオールドマンはさすがというほかない。アカデミー賞主演男優賞を受賞したのも納得できる。
映画の終盤、チャーチルは市井の人々と地下鉄で会って徹底抗戦を決意する場面がある。これはフィクションだろうが、起伏の乏しい映画を盛り上げることには成功している。ラストは事実関係が前後していて史実とは違うのではないフシもあるが、これはこれでいいのだろう。
しかしドイツとの和平交渉が真剣に検討されていたのは事実であり、もしこの時期にイギリスがドイツに屈していたら、世界はどうなっていただろうと思わずにはいられない。この映画はもっぱらイギリスの視点で描かれているが、ドイツはなぜ一気にダンケルクの英仏軍を殲滅しなかったのだろう。以前、映画『ダンケルク』を見たときも同じ疑問を持った。ドイツからの視点で描いた映画も見てみたい。
この映画はチャーチルを演じたゲイリー・オールドマンの演技に尽きる。この映画を見て思い出したのは、映画『小説吉田学校』で吉田茂を演じた森繁久彌である。どちらもリーダーの苦悩を見事に描いていてオススメです。