DVDで映画『Fukushima 50』(2019年、監督:若松節朗)を鑑賞。原作は門田隆将のノンフィクション。福島第一原子力発電所事故発生時に発電所に留まって対応業務に従事した約50名の作業員たちの戦いを描く。
2011年3月11日の東日本大震災による発生した津波が福島第一原発を襲った。津波による浸水により全電源喪失して、原子炉は冷却不能の状況に陥る。このままではメルトダウンにより甚大な被害がもたらされることが予想された。現場作業員は原子炉制御に奔走するが事態は悪化するばかりで、周辺住民の避難が始まる。現場に残された最後の手段は、手動によるベントだけだった。これは作業員が身一つで原子炉内に突入してバルブを操作するという、決死隊のごとき作業だった……。
映画を見ていると、当時どうなるんだろうとテレビを見ていたことを思い出す。現場で何が起こっていたのかを知るだけでも見る意味がある。
この手の映画はドキュメンタリーでもないし、エンターテイメントでもないし、どのように撮ればいいのか難しい作品だろう。事実だけ淡々と並べられても映画としてつまらないだろうし、過度な演出も不要である。その点はよいバランスで仕上がっていた気がする。
作品が大きく破綻しなかったのは俳優たちのおかでだろう。とくに所長を演じた渡辺謙はさすがだった。また東電本店から現場に指示をだしていた篠井英介も内面に葛藤を抱えている様子が伝わりなかなかよい。
原発政策をめぐる議論はひとまず措くとして、原発事故の現場で奮闘した人たちの姿が映像として後世の人たちに残されたことは価値があるように思えた。
ただし結論をどこに帰着させるかという点は不明確で、観客に投げっぱなしになっている。メッセージとしては弱い気がする。