ここしばらくワイドショーを賑わせていた東京都の舛添知事の辞職騒ぎが、ついに知事が辞表を提出することで一応の落着を見た。政治資金「公私混同」問題などの責任を取り、21日付で辞職することになった。
この辞意表明はBBCニュースでも報じられていたが、一連の騒動を知らずに初めてニュースに接した人にとっては実に分かりにくいのではないだろうか。
「違法ではない」のにもかかわらず辞職を迫られる理由が分からないし、不適切な支出というが金額もショボすぎるからである。「なんでこれで辞めるの?」というのが正直な感想であろう。
これと同様に舛添氏は頭のよい人なので、違法じゃないし時間が経てば世論も沈静化しこのまま続投できると考えていたフシがあるが、2つほど誤算があったようだ。
参議院選挙の影響
ひとつは7月10日に投開票される参議院選挙への影響である。舛添都知事は自公に支持されて当選した経緯があり、まさか自民党が自己否定になるような不信任決議案に同調するとは考えていなかっただろう。実際、当初は自民党の都議会議員は不信任決議案に消極的だった。
しかし世論が炎上を続けるにつれ、接戦の選挙区の当落に影響することがわかり、自民党も手のひらを返した。これで不信任決議案が全会一致で可決される見通しになった。
舛添都知事は自分から辞めるタマじゃないから、不信任決議されたら都議会を解散するぐらいやりかねないと思っていた。しかし、さすがに全会一致で不信任決議を食らうという不名誉は避けたかったのだろう。あっさり辞職を決意するに至る。プライドの為せるワザだろうか。
いずれにしても参議院選挙の時期にメディア戦を仕掛けた黒幕がいるとすれば、かなりの知恵者だろう。
「第三者」の調査で炎上
もうひとつは、全般的にメディア対応があまりに稚拙だったこと。ネット時代のメディア対応ができなかった。とくにヤメ検の弁護士が行った「第三者」による調査である。そもそも知事が自分で選任して「第三者」もないものだと思うが、その調査結果が大衆の感情を逆なでした。
問題になっていた政治資金の使途について、「違法ではないが不適切」というのである。たしかに現行の政治資金規正法では、政治活動の自由を保証するために政治資金の使途について制限を設けていない。何に使っても違法ではないが、納税者に対しての説明責任はあるだろう。「違法でないから文句いうな」という奢りが透けて見えたのが致命的だった。
また当初、舛添都知事は事実を精査して説明すると記者会見で答えていたにもかかわらず、自分の言葉で説明するのではなく、ヤメ検の弁護士たちに代わりに説明させたことで一気に信用を失くした。ここがターニングポイントだった。