脳科学者・茂木健一郎による読書術そして読書ガイド。自らの読書体験に基づき読者に語りかけるようなスタイルでとても読みやすい。
なるほどと思ったことをいくつが挙げてみる。
日本語の力を維持するために、折に触れて夏目漱石の小説などを読み返し、スパーリングすることを心がけている。
やっぱり漱石なんだと妙に納得したと同時に、一方で漱石に並ぶもうひとりにチャンピオンとして小林秀雄を挙げているこることに注目したい。この二人の著作は最終章の〈厳選10冊〉にも入っている。妥当なところだろうか。
もうひとつは、電子書籍についての考えである。「ネットの気楽さ」と「紙のプレミア感」を使い分ける、そして「電子書籍と紙の本では、読むのに適した場所も違うし、手軽さも違うし、触り心地もちがう」という。
これは、映画をスマホで見るのと、映画館で見るのとでは体験の質がちがうことと通底し、音楽でもYouTubeとライブではちがう、というのはなるほどと思った。
しかし、正直言うと本書の読書論は結構普通で、それぞれなるほどとは思うがビックリさせられることもない。さらに中で取り上げている本も意外とありきたりの本が多いなと思った。
それでも、読者にとって何冊かでもピコーンと来るものが見つかれば、それでこの本を手に撮った価値があると言うものだろう。また巻末に「本書で紹介した本のリスト」があったのは助かる。
最後に、最終章の載っていた〈一生の財産」としてしての厳選10冊〉をメモ代わりに列挙しておく。やはり古典は強いというべきか。なおオスカー・ワイルド『獄中記』は新潮文庫より角川文庫の方が入手しやすいので変更した。
- 作者:ミルトン・フリードマン,ローズ・フリードマン
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2012/06/26
- メディア: 単行本
- 作者:リチャード P. ファインマン
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2000/01/14
- メディア: 文庫
- 作者:夏目 漱石
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1952/07/22
- メディア: 文庫
- 作者:ソルジェニーツィン
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1963/03/20
- メディア: 文庫
- 作者:小林 秀雄
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1961/05/17
- メディア: 文庫