退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】茂木健一郎『頭は「本の読み方」で磨かれる: 見えてくるものが変わる70冊』(三笠書房、2015年)

脳科学者・茂木健一郎による読書術そして読書ガイド。自らの読書体験に基づき読者に語りかけるようなスタイルでとても読みやすい。

なるほどと思ったことをいくつが挙げてみる。

日本語の力を維持するために、折に触れて夏目漱石の小説などを読み返し、スパーリングすることを心がけている。

やっぱり漱石なんだと妙に納得したと同時に、一方で漱石に並ぶもうひとりにチャンピオンとして小林秀雄を挙げているこることに注目したい。この二人の著作は最終章の〈厳選10冊〉にも入っている。妥当なところだろうか。

もうひとつは、電子書籍についての考えである。「ネットの気楽さ」と「紙のプレミア感」を使い分ける、そして「電子書籍と紙の本では、読むのに適した場所も違うし、手軽さも違うし、触り心地もちがう」という。

これは、映画をスマホで見るのと、映画館で見るのとでは体験の質がちがうことと通底し、音楽でもYouTubeとライブではちがう、というのはなるほどと思った。

しかし、正直言うと本書の読書論は結構普通で、それぞれなるほどとは思うがビックリさせられることもない。さらに中で取り上げている本も意外とありきたりの本が多いなと思った。

それでも、読者にとって何冊かでもピコーンと来るものが見つかれば、それでこの本を手に撮った価値があると言うものだろう。また巻末に「本書で紹介した本のリスト」があったのは助かる。

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最後に、最終章の載っていた〈一生の財産」としてしての厳選10冊〉をメモ代わりに列挙しておく。やはり古典は強いというべきか。なおオスカー・ワイルド『獄中記』は新潮文庫より角川文庫の方が入手しやすいので変更した。

悲劇の誕生 (岩波文庫)

悲劇の誕生 (岩波文庫)

硝子戸の中 (新潮文庫)

硝子戸の中 (新潮文庫)

  • 作者:夏目 漱石
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1952/07/22
  • メディア: 文庫
宇宙からの帰還 (中公文庫)

宇宙からの帰還 (中公文庫)

イワン・デニーソヴィチの一日 (新潮文庫)

イワン・デニーソヴィチの一日 (新潮文庫)

獄中記 (角川文庫ソフィア)

獄中記 (角川文庫ソフィア)

枕草子 (岩波文庫)

枕草子 (岩波文庫)

モオツァルト・無常という事 (新潮文庫)

モオツァルト・無常という事 (新潮文庫)

  • 作者:小林 秀雄
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1961/05/17
  • メディア: 文庫
ファウスト〈第一部〉 (岩波文庫)

ファウスト〈第一部〉 (岩波文庫)