新潮社の月刊誌『新潮45』(2015年 02月号)の特集が、「『出版文化』こそ国の根幹である」だった。「出版社が自分で言うなよ」と言いたくなるが読んでみた。
- 作者:中瀬ゆかり
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/01/19
- メディア: 雑誌
そのなかの図書館の無料貸本屋化を嘆く記事が2つあった。
- 本はタダではありません!/林真理子
- 図書館の“錦の御旗”が出版社を潰す/石井昻
要するに、図書館が新刊を無料でがんがん貸し出すから本が売れなくなる。すると出版社も作家も困る。出版社や作家が疲弊すると読む本が無くなって文化が滅びる。それで本当にいいの、という問題提起である。以前からある図書館の無料貸本屋化問題である。まあ厳密には高い住民税を払っているのだから無料ではないがそれは措いておく。
たしかに「創造のサイクル」が破綻して関係者が経済的に苦しくなれば、既存の出版文化は破壊されて本がいままでように流通するこはないだろう。
しかし図書館で新刊の貸出しを制限したとしても本の売上げが持ち直すものだろうか。無料でなければ読まないという人も意外に多いのではないか。読書と言えども、他の娯楽との競争にさらされている。無料のコンテンツが山ほどある現代社会に読書だけが特別の存在であり続けられるのだろうか。
また記事にも引用されていたが、永江朗氏が述べているように「ただでも読んでもらえればハッピーです」といういう考え方も理解できる。読まれないより、無料でもいいから読んでもらった方がもちろんいいだろう。その上で新しいビジネスを模索する時代でないないだろうか。ペン一本でメシを食う時代は終ったということだろう。
今回の特集で、2013年に図書館の貸出件数が新刊書籍の推定販売数を上回ったというデータがあった。どのくらい正確なデータか分からないが、全国の図書館の貸出件数の総計データがあることに驚いた。これをさらに進めて、どの書籍がどのくらい貸し出されたかをリアルタイム集計して公開したどうだろうか。
そうすれば、図書館で貸出ベストセラーになった書籍を出した関係者も少しはプライドが保たれるのではないか。えっ、それでは腹はふくれないって? でも文化のためですから読んでもらえるだけで我慢してください。
ここで最寄りの図書館で予約数の多い書籍を調べてみた。
フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ“暮らしの質"を高める秘訣~
- 作者:ジェニファー・L・スコット
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2014/10/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
こんなの自分で買えよと思わなくもないが、これが日本の現実だ。しかもハンパない予約数……。もっとも、いま読んでいる『新潮45』も図書館から借りてきたのだから、人様のことをとやかく言えない。