退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

阿部紘久『文章力の基本』

文章力の基本

文章力の基本

ビジネス向きの文章読本としておすすめできる。文章力向上を謳った本は多いが、ビジネスパーソンをターゲットにした本は意外に少ないのではないか。筆者はビジネス界での経歴を持っているので、文章業を生業にしている人や学者の言よりも説得力がある(ような気がする)。

本書は、文書構成といったマクロな視点ではなく、主に文単位でわかりやすく書くテクニックに重点を置いている。項目ごとに原文と改善案を示して、ポイントを説明する形式はわかりやすい。また実地で収集したと思われる例文が多く収録されているのも参考になる。横書きなのも理にかなっている。

その一方で改善の根拠が示されていないケースが散見されたのは気になった。文法上の学術的な説明を加えるのは、この本の本分ではないのだろうが、その道筋ぐらいは示してほしい。

とくに「てにをは」といった助詞の使い方を説明するのは無理だとあっさり切り捨て、「体内辞書」に頼るべきだとまでいう。言語感覚が大事だということだろうが、少しは理論的な説明も求めたいところだ。

あとがきで、良い文章を書くための資質を挙げている。有用なので書き写しておく。

  1. 自分の頭で感じたり、考えたりする習慣
  2. 相手の身になって感じたり、考えたりする想像力
  3. 健全な言語感覚を持つこと

最後の「健全な言語感覚」というのは、とくに難しそうだ。