帯に「美術史を知らずして世界とは戦えない」とあったが、別に戦う気ないけどね……。そう思いながら手に取ってみる。
- 作者:木村 泰司
- 発売日: 2017/10/05
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
2500年にわたる西洋美術史を1冊にまとめるには無理がある。内容が表面的で教科書みたいで読んでいてワクワクしない。どこかで読んだことのある話ばかりだ。それでも、この本を読み通すには、ある程度の世界史の知識は必要であろう。どのあたりの層をターゲットにしたのかよくわからない本だというのが第一印象。
冒頭にある「美術史とは、世界のエリートの‟共通言語“である」というのは確かにそうかもしれないが、わざわざそう謳うのなら、具体的にビジネスで役に立ったというエピソードを集めてほしところだ。そうすれば説得力もでるだろう。
さらに不満を言えば、解説が印象派あたりで終わっていること。20世紀以降の西洋美術はビジネスエリートにとってはどうでもいいのだろうか。ピカソやブラックたちから始まる新たな潮流は不要ということか。歴史との関わりという点からも、近現代史のなかの西洋美術の方が重要ではないだろうか。
そして図版がカラーでないのも不満。コストを考えれば仕方ないのかもしれないし、有名な作品ばかりなので画像検索すれば精細な画像を見つけることができるので致命的ではないが、もう少しカラー図版を奢ってもいいだろう。本は売れてるとらしいしね。
最後にこれぐらいの知識でビジネスエリートに通用するのだろうかと心配になる。せめて横書きの構成にして、画家や作品名などの固有名詞や美術用語は英字表記をつけるべきだろう。
そもそも、こんな中途半端な知識をつけるより、一般的なビジネスパーソンは日本の歴史や美術などを徹底的に勉強して、きちんと英語で伝えられるようにするほうがコスパがいいのではないだろうか。そんなことを思った。