圧倒的な大差で世田谷区長選で再選された保坂展人さんの政治PR本。渋谷陽一さんによるインタビューをまとめた本らしいが対話形式ではなく保坂さんのひとり語りに編集されている。
私は世田谷区民でないので保坂区政が区民にどのように受け入れられたのは判然としないが、政治に対する熱い思いは伝わってくる。
タイトルにある「脱原発」というだけで再選できるはずもなく、区民との対話など地道な政治活動の奏効したのがわかる。もっとも東日本大震災で災害に見舞われたときにまず頼りになるのは、国ではなく住民に近い市区町村であることが周知されたのは追い風になったのは間違いないだろう。
ただのPR本だったら途中で読むのをやめようかと思ったが、面白かったのは保坂さんの「自分史」だった。ユニークな経歴は伝え聞いていたが、ご自身が語り下ろしているのは貴重ではないだろうか。
エリート校の麹町中学校に越境入学するも、学生運動に傾倒し「麹町中学校内申書事件」を引き起こす。このため公立全日制の高校受験はことごとく不合格になりあえなくエリートコースからドロップアウト。新宿高校定時制に通い仲間たちと交流を深めるも中退。さまざまな職を経験しながら教育ジャーナリストとしての立ち位置を確保するが、できることに限界を感じる。政治家の知己を得て政界に入り社民党の衆議院議員として活動するが、その後落選して世田谷区長になる。
ざっくりこうした波乱万丈の経歴だが少年期や国会議員のときのエピソードはなかなか面白い。保坂さんの自分史を読むだけでも、この本を手に取る価値はあるだろう。