積ん読になっていた『女帝 小池百合子』を読んでみた。現職の東京都知事である小池百合子の評伝。これほど小池の人物像にするどく迫っている本は他になく、評伝としては傑作であり、大部ながら引き込まれながら読んだ。
なかでも素晴らしかったのは、”芦屋令嬢”と言われている出自から少女時代、そして“カイロ大学首席卒業”したというエジプト留学時代である。とくにエジプト留学時代は、カイロで同居していたという女性に丁寧に取材していることは特筆できる。内容にリアリティーが感じられた。
留学時代の小池が、この本に書いてあるとおりならば、カイロ大学首席卒業なんてあり得ないし、卒業すらおぼつかないのは明らかである。先の都知事選でも小池の経歴詐称問題が俎上に載せられたが、結局ウヤムヤになってしまった。なんだかなぁ~。
この問題を追及しきれないマスコミに問題があるのは間違いないが、こうした胡散臭い人物を安々と再選してしまう有権者もチョロいと思った。大げさに言えば「民主主義とは何だろう」とため息が出たということだ。
続いて小池が帰国後の話となる。テレビ東京でテレビキャスターとなり、それを足がかりに政界を巧みに渡り歩いて、ついに安倍内閣で大臣にまで上り詰める。そして自民党で冷や飯食いにされると、一転して都知事に出馬し見事当選する流れが描かれる。このあたりは周知かもしれないが、小池中心に日本政治を俯瞰する試みは面白い。
あとがきでは再び「学歴詐称」に話が戻っている。やはりこの問題が彼女の本質を最もよく表しているのだろう。
「事実は小説より奇なり」といったクリシェは使いたくないが、評伝は面白いなと改めて思った。読後これは映画化決定と思ったが、さすがに小池の存命中は無理か。しかし実は映画雑誌『映画秘宝』で映画化会議という記事が連載されている。どれだけ実現性があるかわからないが、ぜひ映画化してほしいと思うほど波乱万丈の人生であり、さぞ画になるだろうと思った次第。