シネマヴェーラ渋谷の《“キネマ洋装店”コラボ企画 美しい女優・美しい衣装》という企画で映画『とべない沈黙』(1966年、黒木和雄監督)を鑑賞。白黒映画。
北海道で少年が蝶を捕まえるが、その蝶は北海道には生息しないはずのナガサキアゲハだった。ナガサキアゲハが列車で長崎から北海道に向かうまでを、各地で展開する男女のエピソードで紡いでいくロードムービー。ドキュメンタリー的映像と詩的な映像の融合とも言うべき実験的な映画。記録映画出身の監督の持ち味が出ている。
Silence has no wings (1966) - singing scene
松竹から招いたアイドル女優・加賀まりこが演じる"蝶の化身"が美しい。同時にロードムービーのなかに、のちに数々の反戦映画を遺した黒木和雄の作家性を感じることができる。映画があまり説教臭く感じられないのは、加賀まりこの幻想的な美しさと、作者からのメッセージが並び立っていてバランスがとれているからだろう。
蝶の幼虫が北上するなか、京都から大阪に戻ったり、なぜか香港に舞台が飛んだり意外性もあるが、映画に一貫性したストーリーがないので正直長時間見ていると辛くなる。最近、辛抱が足らなくなったのかもしれない。