DVDで映画『ときめきに死す』(1984年、監督:森田芳光)を鑑賞。原作は丸山健二の同名小説だがかなり翻案されている。
謎の組織から新興宗教家の暗殺依頼を受けた孤高のテロリスト工藤(沢田研二)がその暗殺に失敗するまでの過程を、北海道の田舎町を舞台に男二人、女一人という奇妙な共同生活を軸に描く。共同生活をするのは沢田のほか、組織から派遣された、自称「歌舞伎町の医者」大倉(杉浦直樹)とコンパニオン・梢(樋口可南子)の3人。
『家族ゲーム』(1983年)を撮った頃の森田芳光監督の凄さを感じられる空気感のある映画。80年代の雰囲気を今に伝えている。乾いた雰囲気と静かな会話劇が冴えている。謎の組織など事件の背景についての説明がほとんどなく、いつまにか始まり、唐突に終わるという映画。
森を走り回りストイックに体を鍛えるジュリーは美しいが、鍛錬の甲斐もなくあっさり暗殺失敗する謎の結末。さらに暗殺失敗後の壮絶な自決シーンは呆気にとられる。衝撃はあるが「なんだかなぁ~」という気もする。
この映画の肝は、3人の共同生活での会話劇だろう。沢田の口調が丁寧になったり、乱暴になったりする芝居が面白い。また杉浦直樹の演技は必見。このような雰囲気のある俳優はいまはいないだろう。
そしてこの映画の樋口は美しい。水着姿を披露しているが沢田との濡れ場では露出はなし。これが実に惜しい。