新文芸坐で開催中の《CD「追憶」発売記念&梶芽衣子著「真実」刊行記念 梶芽衣子映画祭》で、映画『修羅雪姫 怨み恋歌』(1974年、藤田敏八監督)を鑑賞。小池一雄&上村一夫コンビによる同名劇画の映画化。東映映画。『修羅雪姫』との二本立て。
前作で家族の仇討ちを果たした修羅雪姫こと鹿島雪(梶芽衣子)は逃避行を続けていたが、ついに逮捕され死刑を宣告される。しかし死刑執行寸前にやり手の特別警察長官・菊井(岸田森)の配下に助け出される。菊井は、現政権のスキャンダルの証拠をつかんだアナーキスト徳永乱水(伊丹十三)にもとに、証拠書類のありかを探し乱水を暗殺させるために、雪を差し向ける。徳永宅に女中として潜入した雪は任務を遂行しようとするが、乱水の人柄や思想に感銘を受け次第に惹かれていく。検事総長(安部徹)と菊井は、乱水を雪を匿った容疑で逮捕し拷問を加える。乱水は逮捕される前、雪に貧民窟に住む弟・周介(原田芳雄)宛の手紙を託していた……。
修羅雪姫 怨み恋歌(Lady Snowblood, love song of malice) Trailer
原田芳雄、伊丹十三、岸田森らの助演を得て前作より俄然パワーアップしている。こんな映画にはもったいないほど出演陣が充実している。さらに鈴木達夫のカメラや樋口幸男の美術など充実したスタッフにより、映画としての完成度は高い。
前作と同様に梶芽衣子を美しく撮ることに成功しているが、出演者では原田芳雄が突出していて梶を食っているような感すらある。また悪役を演じた岸田森の怪演にも注目したい。相対的に梶の存在感が薄い。
前作は自らの復讐譚だったが、本作では官憲の残忍はやり口に怒りを爆発させる反体制映画に変貌している。前作が「怨み」を前面に据えて力強い映画だったのに比べると、フツーの映画になったなという印象を受ける。
この流れなら続編がいくらでも作れそうだが、残念ながら梶芽衣子の「修羅雪姫」シリーズは本作で終了している。すでに映画の時代ではなくなったのかもしれない。