シネマヴェーラ渋谷の《蓮實重彦セレクション ハリウッド映画史講義》で映画『死刑執行人もまた死す』(1943年)を鑑賞。フリッツ・ラング監督がアメリカに亡命した後に撮ったプロパガンダ映画。ベルトルト・ブレヒトが脚本に名を連ねていることでも知られている。
戦時下、ナチスドイツの統治下にあるプラハ。「死刑執行人」の異名を持つ司令官ラインハルト・ハイドリヒが暗殺(エンスラポイド作戦)されたことから、ナチスはチェコの有力者たちを人質に取るなど手段を選ばずに暗殺犯の摘発に躍起になる。偶然出会った暗殺犯のフランツ(ブライアン・ドンレヴィ)を匿ったマーシャ(アンナ・リー)だったが、その男のため父親のノヴォトニー教授(ウォルター・ブレナン)が人質に取られてしまう。マーシャは父親を助けるためにフランツに自首するように懇願するが……。
プロパガンダ映画なので誰が見てもわかりやすい。それでいてナチスの恐怖を映像のディテールに組み込む演出がラングらしいし、詩の朗読シーンはブレヒトの仕事を感じさせる。ただし、英語劇なのは不満だがアメリカ映画なので仕方ない。
突然始まるアクションシーンや最後のどんでん返しなど、後半の怒涛の展開は娯楽映画としても十分楽しめる。戦時中にこれだけの映画をつくるアメリカに、日本が勝てるわけないわけよなと思わされる。
ラストが、戦時中なので「戦いは終わらない」という「おれたたエンド」になっているは愛嬌か。
シネマヴェーラ渋谷は今年夏に二本立てから入れ替え制に移行した。それ以降、足が遠のいていた。しかし公開時に二本立てだった日本のプログラムピクチャーを1本だけ見て帰るのは物足りない気がしたが、本作のように長尺ならば満足度は高い。