退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『THE FIRST SLAM DUNK』(2022) / 漫画が動くというのはこういうことか

近くのシネコンで復活上映されていたアニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』(2022年、原作・脚本・監督:井上雄彦)を鑑賞。

2022年冬の公開当時、予告編を見て「コレジャナイ」と思ってスルーしていた。そのうちアマプラか地上波で見る機会があるだろうと。しかし、なかなかその機会も訪れず、せっかくだからと「復活上映」に出かけた。

原作は一応読んでいたし、テレビ版アニメも見ていた。どうせアナザーストーリーだろうと思っていたが、クライマックスの山王戦が取り上げられ、そこにリョータの出自を絡めたストーリーだった。

漫画史上に残る名試合にリョータ関連の回想が何度も挿入される構成はやや単調に思えた。原作ファンが主なターゲットとはいえ、やはり赤木中心でドラマを描いてほしかった。

それでもアニメ表現は素晴らしく、新境地を拓いたと言ってもいいだろう。漫画が動き出すということはこうくことかと感銘を受けた。アニメにはアニメなりの表現があると思うが、これはこれでとても見応えがあった。原作者が大きく関与して制作された作品でなければ成し遂げられなかったレベルだ。


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作画は秀逸だったが、それに加えて効果音もよかった。バスケットシューズの「きゅきゅ」という音や、バスケットボールのバウント音がとくに印象的。音響の優れた映画館で見てよかったと思えた作品だった。

本作には原作にない後日談があった。リョータNBAを思しきコートに立っているというもの。リュータがそこまで行けるのかなと思わなくもないが、後味がよかったのでセーフということにしておこう。

余談だが、映画館の入場特典にリストバンドのようなグッズをもらった。もう少し実用的なものがヨカッタかも……。

映画館でもらったノベルティグッズ

鑑賞後、本作の制作過程や監督のロングインタビューが載っている本を読んでみた。漫画を動かす普遍的手法が開発されたわけではなく、原作者の深い関与があってこそのユニークな作品であることがわかる。追随する作品はそうは出てこないのだろう。