DVDでアニメ映画『銀河鉄道999』(1979年、監督:りんたろう)を鑑賞。松本零士の同名SF漫画のアンドロメダ編を再構成した新作アニメ映画。東映動画にとって初の自社製作の劇場映画。市川崑が監修として参加している。
未来の地球。機械化人間が「永遠の命」を得て繁栄を謳歌する一方、貧民層は機械化人間に抑圧されていた。主人公・星野哲郎(野沢雅子)は母親の仇である機械伯爵(柴田秀勝)を倒すためアンドロメダ行きの「銀河鉄道999」の乗車パスを強奪を試みるが失敗。哲郎は、逃亡の途中で出会った謎の美女・メーテル(池田昌子)から999のパスを渡され、二人の旅が始まる……。
城達也のナレーションで「万感の思いを込めて汽車がゆく」と流れると、こみ上げるものがある。この作品は、すでに古典の範疇に入れてもよいが、ノスタルジーを別にしてもいまでもアニメファン必見の作品である。
一応SFアニメなのだが、ロボット、SL、西部劇、宇宙船、海賊などなど、さまざまな要素を盛り込んだ娯楽作品となっている。SF的な細かい整合性や論理性などは無視しても面白ければいいだろう、という潔さが素敵。当時は「汽車が宇宙を走るなんて意味がわからん」とか野暮なことを言う人もいなかったのだろう。
さまざなテーマが内包されているが、最大のテーマは「年上の女」だろう。哲郎少年のメーテルに対する憧れが、この作品の肝でありよく描けている。しかし終着駅に着いたあとのメーテルの裏切りには驚いた記憶がある。私の記憶が正しければ、物語の結末はこの映画で初めて描かれたはずだが、「ネジにされる」というオチは衝撃的だった。哲郎が機械の体を得てハッピーエンドとは思わなかったが、まさかこんな結末とは。しかも帝国の顛末は未解決のままだし……。
そして原作を踏襲した謎の女・メーテルのキャラクターデザインが秀逸なのも特筆できる。松本零士の描く女性はどれも似ているが。一方、哲郎はイケメン風に改変されている。まあ万人受けを狙うためには、こうするのは仕方ないのかもしれないが残念。
今回本作を見直したのは、ミュージカル「銀河鉄道999 THE MUSICAL」で、花總まりさんがメーテルを演じることになったのがきっかけ。あらためて見直してアニメ映画としてよくできてると感心した。いまなお色褪せない魅力があるのは、松本零士の原作に力があるからだろう。