今年夏、アニメ映画『君たちはどう生きるか』(2023年、原作・脚本・監督:宮崎駿)が公開された。
ジブリ世代の私は、これが宮崎駿の最後の長編アニメかもしれないなと思い、映画館まで足を運び見てきた。巷間の評判では「難解な映画だった」という声が大勢を占めていた。たしかに従来のジブリアニメのように、子ども連れで見に行くような映画ではない。面倒くさい映画である。
しばらくしてネット上にも感想が溢れるようになった。主人公の少年が宮崎駿自身で、大叔父が高畑勲だろうというのは、私にも容易に想像できた。ほかにもいろいろと思いを巡らせてみたが、そういえば答え合わせをしていない。
そうしたなか、16日、NHKで面白い番組が放送された。宮崎駿に密着した『プロフェッショナル 仕事の流儀』である。アニメ映画『君たちはどう生きるか』の創作の舞台裏に迫るという趣向である。上述の答え合わせもいくらかはできて満足した。
この番組では、書生として通うことを条件に取材が許された番組ディレクターが、2399日間にわたってスタジオジブリの宮崎駿監督に密着取材している。これだけでもすごいが、NHKの膨大なアーカイブ映像を駆使して、細かいカット割りで編集した映像が素晴らしい。どれだけ時間がかかっているのか。さらにこれまでのジブリ作品の音楽をBGMに使っているのも効果的だった。
内容は多岐にわたるが、とくに宮崎駿と師匠とも言える高畑勲の関係が強調された構成になっているのが印象的だった。
#ジブリと宮﨑駿の2399日
— プロフェッショナル仕事の流儀 (@nhk_proff) 2023年12月15日
スタジオジブリの世界的な映画監督 #宮﨑駿 さん(82)は、いかにして新作 #君たちはどう生きるか を作り上げたのか。創作の舞台裏で、繰り広げられていた物語。
あす16(土)よる7:30~#プロフェッショナル#宮﨑駿スペシャル pic.twitter.com/OXOF3JX4Pa
おそらく、そのうち再放送があると思うがファン必見である。ただし映画は事前に見ておくのがよいだろう。特定の商業映画をそこまで取り上げるのが公共放送の領分に入るのかという疑問はあるが、NHKにしか制作できない番組であることはまちがいない。
番組の鑑賞後、ジブリスタジオは日本テレビの傘下になるというが、NHKにこうした番組をつくることを許していいのかという疑問が湧いてきた。やられ放題である。日テレとジブリは、今後どのような関係になるのだろうか。